みやび

ホーリー・マウンテンのみやびのレビュー・感想・評価

ホーリー・マウンテン(1973年製作の映画)
4.5
人間は内面よりも外見で愛されたがるもの。

ホドロフスキーが巨額をやりたい放題に使った超傑作。
鮮やかな色彩で描かれるこの世界のグロテスクさが癖になる。
ただのカルト映画では収まらない、素晴らしい作品。
自宅での鑑賞なのだが1秒も飽きることが無い。というか飽きさせない作りになっていた。
目の前に広がる意味不明な世界観に吸い込まれる。

映画の魔法を用いて虚構の世界を描く本作は大きく前半と後半に分けられる2部構成となっている。

前半は聖書や密教などの要素を混ぜ合わせて戦争や支配、資本など世に蔓延る負の要素を人類が行ってきた暴力行為を風刺しながら描かれる。

後半ではお金という虚のものに支配された7人の富豪たちの説明シーンがメインとなる。黄金や神、不老不死という言葉で彼らを釣り、厳しい修行を通して物欲や縛りから解き放ち「人間らしさ」を取り戻させるという内容となっていた。

所々に散りばめられた「現実」と「虚構」の対比表現が素晴らしい。
これらの表現は伏線らしい伏線ではないのだがラストを描く上で必要不可欠なもの。

序盤から神秘でグロテスクな世界観を描き、映画という虚構にどっぷりと浸からせておいて、ラストいきなり突き放され正気に戻される感覚は本作でしか得られない奇妙な体験。

全編を通して描かれるホドロフスキー流の世の真理には納得させられる。

暴力なしでは神秘を描くことはできない。

虚構から現実を見つけろ。

愛とは。支配とは。
みやび

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