バナバナ

オレンジと太陽のバナバナのレビュー・感想・評価

オレンジと太陽(2010年製作の映画)
4.0
「太陽が燦々と輝いて、庭のオレンジが食い放題のところへ連れて行ってあげるよ」
と、甘い言葉で孤児院にいる子供を惑わし、1970年代までに13万人以上の子供が、イギリス国家の児童移民政策のため、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ジンバブエに労働力として送られていた。
欧米って、植民地では現地人を5歳位からプランテーションで働かせていたけど、まさか第二次世界大戦後も、自国の子供達まで労働力として密かに移民させていたなんて怖過ぎる。

ジュディ・デンチが主演していた『あなたを抱きしめる日まで』では、アイルランドの修道会が、未婚の若い母親が産んだ赤ちゃんを勝手にアメリカの金持ちに売っていたけど、
まだ相手はお金持ちだし、ちゃんと養子として迎えられていた。
しかし、今作で行われていたのは、子供たちに対する重労働と暴力と性的虐待のオンパレード。

大人になった子供たちは“自分達は捨てられた子”と自尊心を失くしたままで、今も自分が何者か分からずに苦しんでいる。
しかも、彼らを助けようとするハンフリーズさんは、
「教会はそんな事はしない」「彼らは嘘をついているんだ」と、誹謗中傷や脅迫を受ける。
きっと映画の中には出てこなかったが、自分が子供の頃に受けた酷い仕打ちをテレビで話した人にも、セカンドレイプの様に誹謗中傷や嫌がらせがあったのではないだろうか。

ハンフリーズさんご夫妻がこの件を調べ出したのが1987年で、イギリス政府が正式に認めて謝罪したのが、この作品が撮影中だった2010年なんだとか。
親子双方で生き別れた家族のことを探しているのに、さっさと認めて捜索の手助けになる情報を出せ!っつーのよ。
『あなたを抱きしめる日まで』もそうだったけど、教会や福祉団体の言う事を信じて誹謗中傷してくる人の盲目ぶりに驚く(これは日本でも宗教関係無くそうだけど)。
結局そいつらも時代が違うのに仲間になってるやん。
自分の家族に、もしこんな事が起きたらとか全く置き換えて考えないんだね。
『バカの壁』って本が一時流行ったけど、バカって世界中に居るんだなと思った。
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