ロベール・ブレッソン監督作。
二次大戦期1943年のフランスで制作されたロベール・ブレッソンの長編初監督作品で、修道院を舞台に若き尼僧と元受刑者の女の心理の相克と理解を描いた心理ドラマです。
前科者も受け入れているドミニコ会の修道院を舞台に、ブルジョワ階級出身の見習い尼僧:アンヌ・マリーと、自身の殺人罪を秘匿するため修道院に駆け込んできた元受刑者の尼僧:テレーズとの関わりを主軸に描いた心理劇です。
純粋な心と篤い信仰で理想の尼僧像を孤高に実践する若き尼僧が、彼女の言動に反発する他の先輩尼僧との間で対立を深めていきながらも、罪を犯した粗野な尼僧を救済に導くべく力を尽くしていく姿を描いた真摯な作りの“信仰+葛藤心理劇”となっています。
宗教の無力を悲観的に説くのではなく、罪深き戦争の時代において、失ってはならない信仰の崇高さと可能性を対照的な二人の尼僧の心理の相克のゆくえを通じてストイックに浮かび上がらせた骨太な信仰ドラマで、尼僧たちの心の機微を的確に捉えた卓抜の人物描写とひりひりするサスペンス調の二者葛藤心理に張り詰めた緊張が画面上に持続するブレッソン最初期の名篇であります。また、主演のルネ・フォールが純粋さをその表情に反映させた清廉な演技を見せていますし、暗黒の心に閉じた罪深き尼僧をジャニー・オルトが冷淡に演じています。