adeam

沈黙のadeamのレビュー・感想・評価

沈黙(1962年製作の映画)
2.5
"神の沈黙"三部作の一つで、巨匠ベルイマンの脂の乗った時期の演出力が冴え渡る代表作。
翻訳家の女が旅先で体調を崩し言葉の通じない異国のホテルで療養する最中、同行していた妹は欲望を満たすために街へ出て、その幼い息子は所在なくホテルの中をさまよい、やがて姉妹の関係が静かに破綻していく物語です。
まだヘイズコードが残っていた当時のハリウッドならあり得ない直接的な性描写や、説明的な台詞を排除した抽象的な語り口が印象に残ります。
知的で母性を感じさせる女が自慰に耽り野垂れ死んで行く一方で、冷たく身勝手に感じさせる奔放な女は悦びを得て子どもを連れて旅立って行くという無慈悲な展開がショッキングですが、そこには神の不在というよりも人間のコミュニケーションの限界を示すような、断絶された関係とそれが引き起こす悲劇を中間地点で引き裂かれる子どもの視点で描いた物語に感じられました。
正反対に見える2人の女は表裏一体で同一であることを姉妹という形式上の設定に置き換えたようにも思え、そう捉えると瀕死の姉を異国の地へ置き去りにする仕打ちが、自己矛盾の末に分裂して行く精神を表しているように見えました。
adeam

adeam