この映画の一体何を語ればいいのだろうか？
言葉の通じない街に降り立ってしまった姉と妹と妹の息子。子供は子供の世界を遊び、姉と妹の仲は凄まじく悪い。姉は翻訳家の仕事をしており、主義や主張が先に出てしまう人であり、肉体に関わることを疎んじている。病気がちである。妹は自分のことを責める姉が大嫌いで死ねばいいと思っている。自分の子を置いて行きずりの男と関係を持ち、それを姉に見せびらかす。
言葉が通じないという状況だからこそ描かれる人間の可笑しさや不気味さを随所に感じる一方で、同じ言葉を話しているはずの姉と妹の隔たりに愕然とする。「よかった、あなたと言葉が通じなくて」といいながら男とセックスする妹も衝撃だし、姉は唐突に「精液の匂いが嫌い」とか言うし。（1人でエッチしている女性の顔をそんなにアップにしないで…。）これが「巨匠の」作品ですか？と笑っちゃう、めちゃくちゃエロティックで、女が奥底に隠していることを露わに見せてくる話だった。でも私は全然嫌な気持ちにならないんだよね。妹はこれでもかと姉に暴言を吐くけど、姉はあまり言い返さない。妹はすぐ「暑い」と言う。姉の病気は良くならない。姉が物語の最後に妹の息子に教える言葉は、「精神」。
「神の沈黙」が一体なんだというのか、私は姉が語ったことと語らなかったことについてずっと考えてしまう。
でもやっぱり思う、この映画の一体何を語れるのだろう？
