YukiSano

殺人の追憶のYukiSanoのレビュー・感想・評価

殺人の追憶(2003年製作の映画)
4.0
公開当時から観ようと思って遂に18年後の2021年に鑑賞。既に犯人は特定されていた。故に凄い傑作なのに、監督の意図するところに乗りきれてない自分に絶望する。

だけど、この作品の肝は犯人探しではなく、事件を追う内に心の迷宮にはまっていく警察と、時代の変化によって追い詰められていく国家が重ねられている映画のはず。

同じ時代が舞台の「タクシー運転手」では庶民だったソン・ガンホが今度は国家権力側なのも面白い。出てくる人達はみな良いところと悪いところがあり、ジブリのようにのどかなシーンと凶悪な犯罪が溶け込んでいる作風なので、感情の持って行き所に困る。

まさしくポンジュノ印の善悪の境界線がない丸裸の人間像が笑いと共に描かれ、犯人を捕まえるために容疑者を追い詰める警察の狂気が生々しい。その合間に、とぼけた笑いが入るので余計に闇のコントラストが深まる。

天才監督が完全に覚醒した名作としてパラサイトと並んで韓国映画の代表作。しかし、こういう名作は早めに見ないと時代が変わると見え方が強制的に変更されるので反省した。忘れた頃にまた見直そうと思う。
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