はじめてこの映画を観たときの衝撃が、いまだに忘れられません。
容疑者虐待、自白強要、薬物常習。
あまりにも強烈な存在感を放つローカル刑事ソン・ガンホの、パワフルな暴走ぶり。
そんなガンホ兄貴と対をなす、ソウルからやって来たエリート刑事キム・サンギョンの、スマートかつ論理的な捜査。
そして2人の刑事を翻弄する寡黙な青年パク・ヘイルの、心の内を全く読みとらせない無機質な眼差し。
彼ら3人を軸に展開する重厚なドラマに、
「黒澤作品にも似た味わい深さを感じさせるなぁ…」
などと感心していると、ポン・ジュノ監督ならではの皮肉なユーモアに突然ハッとさせられます。
ついさっきまでドツキ回していた容疑者と一緒にラーメンを啜りながら、大好きな刑事ドラマに歓声をあげるガンホ兄貴、最高ですよね!(笑)
そして、二転三転する展開を夢中で追っているうちに唐突に迎えるラストシーン。
そこに漂う、なんとも言えない無常感 …。
でもそれだけじゃない。
この映画を観終えたあと、心のなかにはズッシリとした充実感も残ります。
救われる者のいない陰惨な物語であるにもかかわらず。
ところで、近ごろ大物扱いされ過ぎてる感が否めないソン・ガンホ兄貴。
たしかに彼は韓国映画界最高の大物だけど、そろそろこういうヤンチャな世界に帰ってきてほしいですね。
ソン・ガンホ演じる殺人課のコワモテ刑事とチェ・ミンシク演じる老獪なキング・オブ・ヤクザが激突する韓国版「ヒート」とか、観たいなぁ!
(妄想です。)