がちゃん

殺人の追憶のがちゃんのレビュー・感想・評価

殺人の追憶(2003年製作の映画)
3.9
なにか懐かしく感じる田園風景が広がる田舎で起こる連続猟奇事件。
雨のシーンが美しい。
雨を下から仰いで撮ってるシーンは良く観るが、真上に近いアングルから雨に濡れる登場人物たちをとらえているシーンがとてもいい。

発見される死体はグロテスクなのですが、なんだか『ツイン・ピークス』の死体を連想してしまった。

性格の合わない二人の刑事が衝突しながらも事件を解決していくというのは、一種こういう作品のパターンであるが、この二人の個性は人間味があっていい。

遺体確認の後に焼肉を食べたり、先述の銭湯のシーンなど小さなギャグを交えながら進んでいくが、いつも暴力で自白を強要していた同僚の刑事が足を切断してしまわなければならなくなるエピソードは、因果応報を感じさせた。

終盤、絶対的な証拠として精液が採取され、鑑定結果がアメリカから送られてくる。
最も疑わしい容疑者を前にして激高している刑事にその鑑定結果が知らされるシーンは、この作品のクライマックスだ。

このシーンも雨が重要なアクセントとなる。

事件から約20年後。
刑事を辞めてセールスマンをやっているパク元刑事が、久しぶりに現場に戻ってくるラストシーン。

最初に女性の死体が発見された暗渠をのぞき込んでいるところに女子小学生がやって来る。
小学生の言葉に表情が変わるパク元刑事。

『半地下の家族』でもそうだったが、
ポン・ジュノ監督作品の余韻は独特だね。
ソン・ガンホの好演と相まって抜群のラストシーンになっている。

ポン・ジュノ監督の映像センスは、そのシーン一つ切り取って一枚の絵画になり得るほど素晴らしい。
それをエロ・グロ描写だと言って嫌悪する人には、合わないと思うから観ない方がいい。
まあ、猟奇殺人事件が背景なだけに苦手な人は観ないでしょうけど。

尚、モチーフとなった華城連続殺人事件は長い間未解決でしたが、
2019年に容疑者が逮捕されたらしいです。

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