こういう群像劇もあるのですね。
ドラッグについての映画として、ある種の決定版とも言ってよいぐらいの作品ではないでしょうか。
メキシコの大元の麻薬カルテルからアメリカの少女という末端の消費者までどういう流れでドラッグが辿り着くのか、そしてそれを阻止する為に闘う人達を3つのストーリーラインで描かれます。
それらを混乱させることなくシックに、そして大胆にまとめあげるソダーバーグの手腕にも関心してしまいます。
一旦、根元の方のドラッグの流れ、それこそ“トラフィック”に齟齬が起きるとどうなるのか、その後どこまで影響が広がり、いくつの人生が壊れるのか、他の映画では個別に扱われていたような事象を映画の特性を活かして一つの筋として浮き上がらせた傑作ではないかと思います。
“なぜドラッグを撲滅することが出来ない?”
誰もが一度は考えたことがあろう素朴な疑問に答えてくれるような作品でもあります。
犯罪だからダメ絶対という単純なことではなく、薬物という“物質”自体にもたいして意味は無く、もはや我々人間の心のあり方。
隣に顔を向ければいつでもそこに居る悪魔の誘惑であり場合によっては天使のささやき、おそらくは“撲滅する”ということ自体が何か大きく見当はずれなところを見ているのではないか、そんな事まで考えを至らせる大きな問題を描けた作品だったと思います。
それでいて、ちゃんと面白い、というのが良いですね。