イチロヲ

忘れられた人々のイチロヲのレビュー・感想・評価

忘れられた人々(1950年製作の映画)
4.5
生活困窮により愛情不足で育った少年が、更生施設から逃げ出してきたリーダー格の非行少年に日常を掻き乱されてしまう。メキシコ貧民窟における「負の連鎖」を描いている、ヒューマン・ドラマ。1950年当時のノンフィクションに則している。

劇中に登場するのは、生まれ育った環境により特殊きわまりない倫理性が植え付けられた人間ばかり。生き延びることに一所懸命であり、年功序列が存在せず、善行悪行の判断をしている余裕すらない。都会部から隔絶された、貧困窟の物語。

罪の意識に苛まれた少年が幻覚を視るシークエンスに、前衛作家ブニュエルの手腕が発揮されている。そして、若い母親が素足を洗う場面と少女が太ももを露わにする場面に、ブニュエルの個人的なフェティシズムが反映されている。

「無垢な少女と障害者は絶対に守護しなければならない」という風潮に対する、アンチテーゼを含ませるところも、さすがと言いたい。貧困に喘ぐ人間たちのジタバタ模様がエモーショナルに描写されており、後に引きずる系映画の代表格と言っても過言ではない。
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