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「忘れられた人々」に投稿された感想・評価

てつじ

てつじの感想・評価

3.9
ルイス・ブニュエル監督が、メキシコの経済発展の裏に潜む市井の人々の絶望的な貧困を冷徹なリアリズムで描く。重苦しい閉塞感と、そこに暮らす少年たちの犯罪に染まる日常性の明日なき姿が痛々しい。抑圧されたシュールなエロティシズムと、撲殺された二羽のニワトリの残酷な比喩。
adeam

adeamの感想・評価

4.0
ブニュエルがカンヌで監督賞を受賞したシリアスな傑作社会派ドラマ。
戦前の活動では映画監督というよりシュールレアリストという呼称がふさわしかったブニュエルが初めて主要な国際映画賞で評価を受けたメキシコ時代の代表作です。
貧しいながらも懸命に生きる人々をロケーション撮影で生々しく映し出すスタイルはネオリアリズモの作品群と見まごう雰囲気ですが、帰る場所などない少年たちのヒリヒリとした熱気は「シティ・オブ・ゴッド」の原型のようにも感じられました。
教育とは無縁で犯罪行為に手に染める日々を送る少年が罪悪感と求愛を垣間見せるも、年長者たちに引きずり降ろされる姿が哀しく胸を打ちます。
悪夢のシーンは少年の心境変化の発露として重要な場面でしたが、舞台を客席から遠巻きに眺めるような画面構成と必要性の分からないスローによって、センシティブさよりも異様な不気味さを感じさせるあたりにブニュエルらしさを感じました。
結末はその終えどころの唐突さも相まってあまりにも容赦のない強烈なラストシーンでした。
冒頭で、この映画は事実に基づいたもので楽観的に制作されてないと説明されるが、本当に救いようのない出来事の連続で、何とも重苦しい気持ちになった。
少年たちの非行の原因は生育環境のひどさ、根本は貧困のせいだとは思うけど、情に訴えるような湿っぽい演出は無いので、ひたすら乾いた暴力が続くような感覚。しかし、女性の脚や幻想的(しかし恐ろしい)な夢の描写は、映画的に作られたシーンだと少し感じた。
母親からの愛を得られず苦悩し、真っ当に生きようとするペドロの動向は観てる我々に少しの希望を抱かせるが……。現実ではうまくいかないことの方が多いし、誰も助けてくれない、こういった環境なら尚更そうだ。みんな自分のことで精いっぱいで、貧しくとも心が清廉なら、みたいな綺麗事は全く通じない世界。自分の辛い境遇を嘆くことも、人の不幸に同情することもない。人が死ぬ、殴られ殺されることは特別な出来事じゃないし、命が今ここにある意味を問う余裕なんてない。知ってる人が死んでも感傷に浸らず、真っ先に自分の身の振り方を考える。

「ひとり死んだ こうしてみんな消えてゆく」
「生まれる前に殺しちまえば良かったんだ」
piputa

piputaの感想・評価

3.9
ブニュエルによる社会派リアリズム。
事実に基づき実在する人物をモデルにしているとのこと。

貧困でいつもお腹を空かせている少年たち。
彼らを軸に大人たちとの関係性を
さまざまな角度から見つめる。

悪行を改め、真っ当に生きようとするペドロは
母親からの愛情と信頼を得られず苦悩する。
また、感化院から脱走し犯罪を重ねていくハイボ。
母親を知らないハイボはペドロの母親に母性を求める。
ハイボについては背景説明が乏しいため
彼自身の本質が今ひとつ見えてこなかったが
その粗暴性から親から十分な愛情を与えられない
境遇だったと想定する。
他に、おそらく父親に置き去りにされ
独りになってしまった小さな目の少年。
彼は盲人カルメロに拾われるが
高圧的なカルメロを慕うようなこともなく
淡々と過ごしながら父親を探し続ける。

暗く停滞した日常の中で
少年たちの痛ましい有様が終始描かれる。

鶏を叩き殺すシーンや
障害者に対し危害を与えるシーンなど容赦なく見せてくる。
同時にそれらは少年たちの心の闇の深さを露呈させる。
一方、ブニュエルお決まりの女性の脚の描写については
挟みどころに疑問を抱きながらもそれはやはり官能的で
この閉塞感ある世界から別世界に連れていかれるかの
ようだった。

ペドロが不安に苛まれて見る悪夢の表現は
当時の撮影技術を鑑みても
シュルレアリスム的で興趣が尽きない。
また、ストーリーの所々に登場する鶏の存在は
負の連鎖に警鐘を鳴らすシンボルのように思えた。

野放しにされた数々の社会問題を提起しているものの
冒頭で事実を見せるため楽観的には制作されずと
明記しているように、例えば少年たちの心の闇や
障害者に寄り添うような積極性はまるで感じられなかった。
むしろ冷徹な目線を通して救われない現実を
淡々と投影させている。
リアリズムを確立し、これだけ骨太なドラマが撮れたのは
その目線あってこそだと思った。
悪行のかぎりを尽くした非行少年らは、それ相応の報いを受ける。身から出た錆。しかしその錆が逆照射するのは、欲に塗れた大人たちの卑しさだった。

ブニュエルにしては珍しい、地に足のついた表現。画面のなかで小さくなっていく子どもの姿に、思わず涙。
Foufou

Foufouの感想・評価

4.0
少年の見る悪夢のシーンは、あれは我々の深層心理にある恐怖の根源的な姿をしかととらえているのではないか。『狩人の夜』の水中に揺れる死体と同じくらいに。悪党のハイボの造形も見事。「子どもより貧困を閉じ込めておきたい」という良心的な感化院の院長のセリフが象徴するように、貧困という環境要因によって堕落する子どもたちを描いて社会派の面目躍如とするところであるし、往時の風俗をよくとどめてユネスコの「世界の記憶」に登録されているらしい。

人物に対する距離感といい、カット割といい、非常に好みの監督。
Lou

Louの感想・評価

3.8
「近代都市はその富と極貧を裏に隠している。子供たちは飢えて、学校からも見放され、非行に走りがちになる。改善しようと社会は努めるが、報われるのは限定的である。未来は現在に縛られ、子供たちの権利が回復するのは先の話だ。この映画は事実を見せるため楽観的には制作されず、問題の解決は社会の進歩に委ねられている。」
というなんとも正直なナレーションとともに映画は始まる。
主人公のペドロは学校にも行けずに働き、母親からの愛情に飢え、仲間の一人に濡れ衣を着せられる。序盤では恵まれない少年という描かれ方がされているが、次第に彼は非行的な行動を見せるようになる。特に母親が鶏の喧騒を止めるために棒で叩き殺したことにショックを受けていたペドロが、感化院で自身も同じことをしてしまう場面は何とも皮肉だ。上記ナレーションが示していたように、映画の結末は全く報われたものではない。
映画が公開されたのは1950年、現地メキシコで初上映がなされるも、あまりに救いがなく、残念なことにそれが社会の実情そのものであったことゆえ、センセーショナルが過ぎると3日で上映中止となったという今作だが、ここまで痛切なメッセージを1950年という時代に投げかけたことには大きな意味があると思う。
えり子

えり子の感想・評価

3.5
ハイボが余りに、狡猾、残酷であった。
悪の権化で、観ていて不快でした。
ペドロが余りに哀れでした。
救いと言えば、ハイボが死ぬ事くらいでした。
観ていないけど、エイゼンシュタインの「メキシコ万歳」が何と皮肉に虚しいか。今、メキシコは麻薬戦争で血で血を洗う抗争をしている。
その証拠写真にはぞっとしました。
tych

tychの感想・評価

3.7
LOS OLVIDADOS 1950年 ルイス・ブニュエル監督作品 81分。感化院を脱走した不良少年ハイボ(ロベルト・コボ)は密告者を殺す等罪を重ね、不良仲間特にペドロ(アルフォンソ・メヒア)を巻き込む。救おうとする大人もいて ペドロが立ち直ろうとする度に ハイボが現れブチ壊してしまう。負の回転の軸となるハイボ 巻き込まれる周囲、特別悪くもないのにひたすら不幸になっていくペドロが何とも哀れであった。
一人旅

一人旅の感想・評価

3.0
ルイス・ブニュエル監督作。メキシコで生きる少年たちを描いた作品。悪童ハイボが怖い。周りの年下の少年たちを引き連れ、悪さを繰り返す。盲目の老人をいじめたり、友人の母親と関係を持ったり、簡単に人を裏切る。挙句の果てには怒りに身を任せ、知り合いを殺してしまう。ハイボが全ての中心となって周りに影響を与えていく様が冷静に描かれている。
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