デニロ

女の座のデニロのレビュー・感想・評価

女の座(1962年製作の映画)
4.5
1962年1月東宝作品。脚本:井手俊郎、松山善三。監督:成瀬巳喜男。オールスターキャスト。

東京オリンピックを控えた東京の石川家の日常。

冒頭、家族間の関係が?マークだったが、最初のシークエンスでその関係性が明確になる。とはいえ、こんな家にはいたくないなと思わせる複雑な関係。後妻、年齢の近い義理の母娘、母違いの姉妹、そしてその家の長男である夫を亡くした嫁とその息子。

杉村春子、高峰秀子、草笛光子、司葉子、星由里子、三益愛子、丹阿弥谷津子、淡路恵子。笠智衆、加東大介、小林桂樹、三橋達也、夏木陽介、宝田明、大沢健三郎。主要な登場人物を書き込んだ脚本は見事だが、それを仕切った演出にも驚嘆する。この頃の作品を見ていると、映画会社の技術力は並々ならぬものがあると実感する。

30歳を過ぎたオールドミスという設定の草笛光子が、妄執に憑りつかれたかの如き演じっぷりを見せて圧巻。宝田明に恋をし、近寄る女に紅蓮の嫉妬を振りまき、何を血迷ったか、兄嫁高峰秀子を謗りまくる。あのつくりの大きな顔で怒鳴り散らされたらたまらない。その夜、高峰秀子に愛息の死が襲う。通夜の折、高峰秀子は息子の机に座り呆然としている。心配になった司葉子が声を掛ける。高峰秀子は、息子を死に追いやったのは自分であるという自責の念に苛まれている。この家でただ一人血のつながらない他人であるがため、血のつながる息子に過度に頼ってしまった。その息苦しさに息子は悶々としていたことを知っていたはずなのに、自分は追いやってしまった。この場面の高峰秀子の演技には飲み込まれてしまう。同じ場所にいた司葉子は何もできなかった。司葉子はどう見ていたんだろう。

司葉子と星由里子ふたりのシーンはやさしくて残酷。

新文芸坐 日本映画のヒロインvol.16 司葉子 美しさと凛々しさと にて
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