ティンク

妖星ゴラスのティンクのレビュー・感想・評価

妖星ゴラス(1962年製作の映画)
3.5
『トンデモ映画だけど、地球丸ごと救うって、どんだけ崇高なの』

【過去作レビュー】
テレビでしか観たことない作品。午前10時の映画祭で、4Kレストア版を鑑賞。おそろしく緻密なレストアにより、初上映時の長尺版を再生とのこと。メチャクチャ綺麗です。4チャンネル音声も再生されてます。(おそらく上映当時よりも優れた環境で観られる再上映。最高です)

隕石なんかが衝突する映画のメジャーなものをあげて見ると、
「メテオ」(1979)
「ディープインパクト」(1998)
「アルマゲドン」(1998)
といったものがありましたが、まぁどれをとっても、隕石を核ミサイルで破壊したり、核爆弾で軌道を逸らせようとするものばかり。で、失敗した場合にそなえて、一部の人間が助かるシェルター作ったりして。

さらに以前には、「地球最後の日」(1951)がありました。遊星が衝突するっていうので、ごく一部の人だけをロケットに乗せて脱出するという。明らかにノアの箱舟がモチーフで、キリスト教圏の発想ですね。で、その宇宙船に乗り込むのは、見事に白人ばかり。自分たちだけ助かればいいんですね。

それに引き換え本作。衝突しそうな黒色矮星に対峙するのではなく、なんと地球ごとよける!!

そうすれば、全人類、全動植物が助かるじゃないですか。
シェルターや宇宙船で一部の人間だけ助かるなんてことはしないんです。
トンデモ設定ですが、なんて崇高な目標でしょう。

それまで、精巧なミニチュア特撮は怪獣による「破壊」を描いてきましたが、今回は逆。
これでもかという精巧なミニチュア特撮で、地球を動かすための巨大噴射口の「建設」を描くという。新しい。
1990年代でもハリウッドで出来ていないモノを、1962年に作ってしまっているんですから凄くないですか。

・妖星ゴラス接近による天変地異の高潮災害シーンは、東日本そのままでした。
・「天気の子」のイメージを60年前に先取りしているシーンも。
・登場する国連の飛行機は、そのままウルトラマンのジェットビートルに流用されます。
・ゴラスに接近して観測するシーンは、後のサンダーバードにそっくりのエピソードが出てきます。(太陽号)

いろいろな面で先駆。

別に科学的リアリティを追求しているのではなくて、目を見張る特撮シーンを撮るためのストーリーになってます。
東宝本社のお達しで、無理くり怪獣を出しているのもご愛敬。それもウルトラQのトドラに流用されてるし。

つっこみどころも満載ですが、こんなセンス・オブ・ワンダーを感じさせる映画が自分の生まれる前に作られていたこと自体がホント驚きです。土星の輪だけ吸い取られるなんて、科学的根拠ないでしょ。(当時観たチビッ子たちは、ほんとワクワクしたんだろうなと思えます)

【追記】
ツッコミどころもうひとつ。宇宙船の乗組員たちはいきなりこんな歌をみんなで合唱します。青春モノ?
♪狭い地球にや未練は無いさ
 ~広い宇宙は俺のもの、俺のもの、
 ~オイラ宇宙の、オイラ宇宙の、オイラ宇宙のパイロット

なんと!、JOYSOUNDで歌えるそうな。
ティンク

ティンク