のんchan

地獄に堕ちた勇者どもののんchanのレビュー・感想・評価

地獄に堕ちた勇者ども(1969年製作の映画)
4.0
ルキノ・ヴィスコンティ監督は簡単に手が出せずなんとなく遠い存在でした。
『異邦人』しか観ておらず、ヴィスコンティらしさは解らなかったので、ようやく『ドイツ三部作』に挑戦、まず一作目。

1930年代前半、ナチスが政権を掌握して間もない頃のドイツの名門鉄鋼一族の華麗なる栄光から没落へを描いている。
その背景に1933年2月27日に起きたドイツ国会議事堂放火事件、1934年6月30日〜7月2日ナチ党が行った突撃隊(SA)への粛清事件(長いナイフの夜)を挟み込み、リアルなドイツ民主主義の横死から全体主義の台頭も印象付けつつ、なんとも耽美で官能的で退廃的なドラマだった。

主役のダーク・ボガードはそこまで目立たず、その愛人イングリッド・チューリンの艶かしさとこれぞ強かな悪女の極みが浮き立つ。そしてその息子ヘルムート・バーガーの中性的な美貌と怪演が観れたことが、私にとってこの作品の大収穫でした。
女装趣味、ロリコン、近親相姦と変態行為の限りを尽くしています。

SA隊長エルンスト・レーム筆頭に隊員たちのゲイ描写、その後の親衛隊の急襲も、ナチス映画好きには面白みが重なった。

もう一つ、23歳の美し過ぎるシャーロット・ランプリングも素敵。
監督は女優の髪型や帽子やベールが目をどのくらい覆うのか、全て細かなチェックをして、完璧になるまで撮影をしなかったとの徹底ぶりを特典映像で知った。

ホラー映画より怖いラストシーンも必見。

観終わってかなり余韻を残すが、上手く言葉で表現出来ないもどかしさがある。いつも好みがハッキリしている私だが、まだヴィスコンティを好きかどうかは不明...
のんchan

のんchan