地獄に堕ちた勇者どもの作品情報・感想・評価・動画配信

「地獄に堕ちた勇者ども」に投稿された感想・評価

ROSA

ROSAの感想・評価

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オープニング
激しく熱せられた鉄が飛び散る溶鉱炉と打楽器の音
何かが起こりそうな予感しかなかった

常に不穏な空気が流れるままの展開
なのにきっと繰り返し観たくなるでしょう

ルートヴィヒに続いてのヴィスコンティ
今は 妖しく美しいヘルムート・バーガーの虜です
フィルム欠けてるんか?ってくらい飛躍があったりしてよく分からん部分が多くて、単に見落としてるだけかもしれないけどとにかく不親切に作られてる(気がする)んだが、それでも全然、不親切さを含めて面白い。
いつのまにか人が死んだり監禁されてたりするんだが、これを「いつのまにか」って感じてるのは自分だけなのかどうなのか…俺は正直、人物と顔もあまり分かっていないまま見てた。
ヘルムート・バーガーに何回もキスする小さい女の子(めちゃ好きなシーン)がその後に高熱を出して顔面蒼白のままおもむろにベッドから立ち上がって静かに階段を上がっていく場面の怖さと言いようのない魅力。
majizi

majiziの感想・評価

5.0
何もかもが悪の美学にあふれていて毒気にやられる作品でした。

ナチスを題材にした映画は山ほどありますが、それを単に断罪する社会派ドラマというわけではなく、それをとりまく全ての人間の業が焦点でとにかく凄まじい内容。

ナチスが政権をとった時代のドイツを背景に鉄鋼業の財閥一家の権力争いが繰り広げられます。

実際にあった国会議事堂放火事件、ナチスの内紛(突撃隊vs親衛隊)の「長いナイフの夜事件」が出てくることや、『マクベス』や『ブッデンブローク家の人々』からも要素を取り入れた盛りに盛った濃厚な物語。

さらに一通りの性的倒錯が出てくるため胸焼けします。つまり登場人物はほぼクズか変態しかいません。

その中でも一段と儚げで危ういヘルムート・バーガーの変貌ぶりが最高でした。

なるべくしてそうなっていく一族と、ファシズムに染まっていく国。
同じくイタリアの凋落と戦争を見たヴィスコンティが描いたドイツ。
文句なしの傑作だと思います。
クライテリオンのBDで鑑賞。ドイツ三部作の導入。セミナーのためにひさしぶりに再見。いやあ面白い。

以下備忘のために

ほんとうはプルーストの『失われた時を求めて』を撮りたかったヴィスコンティ。それが無理だとわかると、ともかくも家族をテーマにした映画に向かう。思い出したのは愛読していたトーマス・マンの『ブッデンブローク家の人々』(1901)。これはマン自身の家族に触発された物語だが、ヴィスコンティは「プロイセン貴族で製鉄王のエッセンベック男爵家」と設定しなおす。

ここにシェークスピアの『マクベス』(1606頃)ーーあるいはそのヴェルディのオペラ版(1847初演)ーーが重ねられる。魔女の預言で王になる野心を抱くマクベス。その野心に興奮するマクベス夫人。このふたりをヴィスコンティは、ダーク・ボガード(フリードリヒ)とイングリッド・チューリン(ゾフィー)に託す。魔女に相当するのはナチス親衛隊(SS)アッシェンバッハ。ドイツの名優ヘルムート・グリームが演じる。

マクベスが殺すダンカン王は、ヴィスコンティの作品ではエッセンベック家当主ヨアヒム。演じるのはドイツの名優アルブレヒト・シェーンハルス(1888 – 1978)。医学部の卒業で外科医を目指すも、第一次世界大戦の負傷で断念。1920年ごろ演劇の世界、さらに映画界で活躍するも1940年にナチの映画に協力を拒否。第二次対戦後はしばらく医者として活動してから、テレビ、演劇界で活躍。ヴィスコンティのこの作品で、ひさしぶりに映画にカムバック。そんな経歴の人。
(https://en.wikipedia.org/wiki/Albrecht_Schoenhals)

王座についたマクベスを脅かすのがバンクォー。スコットランドの将軍で、マクベスの友人。ヴィスコンティの作品では、ナチス突撃隊(SA)のコンスタンティン(ラインハルト・コルデホフ)。実にみごとな設定。突撃隊(SA)は純粋にナチス革命を信じる手段で活力はあるものの、粗野で荒々しい集団。ドイツ国防軍から疎まれており、ついには「長いナイフの夜」(1934年6月)で粛清される。

マクベスから大きくずれるのは、殺されるダンカン王の長男であるマルカムの設定。この役をマーティンとして、ヴィスコンティはヘルムート・バーガーを抜擢するのだけど、ヘルムート/マーティンの存在感は圧倒的で、主役であるはずのボガード/フリードリヒを完全に食ってしまう。もちろんボガードがサポートして、ヴィスコンティの演出があるからこそ、素人のきれなだけの元ホテルボーイが、みごとな演技をしてみせるのだけど、それにしても見事。

ひとつには、マーティンの設定がある。『マクベス」では殺される王の息子だが、『地獄に…』では当主の戦士した息子の子供(つまり当主の孫)にあたり、いわばエッセンベック家の直系後継者。その母ゾフィー(チューリン)は未亡人としてエッセンベック家にとどまっているが、エッセンベック鉄鋼の重役であるフリードリヒ(ボガード)に肩入れしている。もともと血族ではないゾフィーだが、その野心は、自分の息子マーティンを精神的支配下におきながら、フリードリヒと再婚することで、エッセンベック家の当主の妻の座につくことだ。

当のマーティンはといえば、そんな母ゾフィーのもとで、すっかり歪んでしまっている。この歪みの映像的な表現が、かれが誕生日で披露する出し物、マレーネ・ディートリッヒのヒットナンバー『Kinder, heut' Abend da such ich mir was aus(みんな、今夜わたしは何かを選ぶのよ)』。これはジョセフ・フォン・スタンバーグの『嘆きの天使』(1930)で披露されたナンバー。ドイツ初のトーキーにより、ディートリッヒは一躍世界的なスターとなる。

実はこのころ、ヴィスコンティ本人もドイツに滞在していたのだという。突撃隊が粛清されるという事件については、そのころは印象がなかったとしながらも、当時のドイツの雰囲気は肌で覚えていたという。だからこそのディートリッヒであり、マーティンの女装もまた、ワイマール体制期の自由な雰囲気の表現でもあったわけなのだろう。

彼の歌うディートリヒの歌はこうだ。

♪春が来る スズメがさえずる
♪
花の香りが立ち上がる
♪わたしは恋に落ちたのだけど
♪どの男だかわからないけど
♪
お金があるかどうかで変わることはない
♪だって愛があればそれだけでリッチ
♪みんな、今晩わたしは何かを選ぶの
♪男をひとり、それも本物の男

♪みんな、もう誰もがわたしに首ったけ
♪でも選ぶのはひとりだけ 本物の男をひとり

♪その心に愛がまだくすぶっている男
♪
その目に炎が燃えている男
♪まだ気持ちがあってキスをしてくれる男

♪そんな男、そんな本物の男を選ぶのよ

Frühling kommt, der Sperling piept
Duft aus Blütenkelchen
Bin in einen Mann verliebt
Und weiß nicht in welchen
Ob er Geld hat, ist mir gleich
Denn mich macht die Liebe reich
Kinder, heut Abend, da such ich mir was aus
Einen Mann, einen richtigen Mann
Kinder, die Jungs häng'mer schon zum Halse raus
Einen Mann, einen richtigen Mann
Einen Mann, dem das Herze noch in Lieb erglüht
Einen Mann, dem das Feuer aus den Augen sprüht
Kurz, einen Mann, der noch küssen will und kann
Einen Mann, einen richtigen Mann

YouTube の映像がこれ:
https://www.youtube.com/watch?v=cHNVxQQuqq8

『嘆きの天使』の映像はこれ
https://www.youtube.com/watch?v=fqUk1Xc3lYU

マーティンはこの歌を歌うのだけれど、その衣装や振り付けはこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=8gAo2aR_tUw

この曲は『Ich bin von Kopf bis Fuß Auf Liebe eingestellt(私、頭から爪先まで愛するためにできてるの)』という曲。

♪私、頭から爪先まで
♪愛するためにできてるの
♪だってそれが私の世界
他にはないの
♪私がすべきなのはそれ
♪
それが私の本姓
できることは愛するだけ
♪他にはないの
♪男たちは私のまわりをブンブンと
♪
まるで火に集まる蛾のようね

♪焼け焦げてもわたしは何もできやしない
♪
私、頭から爪先まで
♪愛するためにできてるの
♪だってそれが私の世界
♪
他にはないの

Ich bin von Kopf bis Fuß
Auf Liebe eingestellt,
Denn das ist meine Welt.
Und sonst gar nichts.
Das ist, was soll ich machen,
Meine Natur,
Ich kann halt lieben nur
Und sonst gar nichts.
Männer umschwirr'n mich,
Wie Motten um das Licht.
Und wenn sie verbrennen,
Ja dafür kann ich nicht.
Ich bin von Kopf bis Fuß
Auf Liebe eingestellt,
Ich kann halt lieben nur
Und sonst gar nichts.

このマーティン/ヘルムート・バーガーこそが、おそらくはこのヴィスコンティ版『マクベス』の最大の成果なのではないだろうか。このトーマスマン流の家族の物語は、今その崩壊の始まりにある。その象徴がマーティンの「嘆きの天使」のパフォーマンス。かれがそのディートリッヒばりの女装を、あのSSの制服に着替えるとき、崩壊(デカダンス)が完成する。

それは「政治的な生活の美学化/感性化/芸術化 estetizzazione della vita politica 」(@ベンヤミン)とでも言える現象。これにたいしてベンヤミンなら「美学/芸術の政治化 pliticizzazione dell'estetica 」で答えるだろうけれど、ヴィスコンティは違う。

つづく『ベニスに死す』では、美 bellezza は、死すべき存在である人間を超えるところにあることを示し、『ルートヴィッヒ』では、そんな美を追い求めるひとりの男の人生、実存、あるいはデカダンスにその眼差しを注ぐことになる。
最悪の前夜。複雑に絡み合う性的倒錯と政治的カオスの果てにヒトラー・ナチス独裁の爆誕。

三島由紀夫はこの映画を「傑作」「生涯忘れがたい作品」と絶賛した上で、評論を書いた。その約半年後に例の事件で自決した。当の戦後ドイツ人であるファスビンダーはこの映画を30回観たという。次々と問題作を撮り、自己破壊ともいえる薬物過剰摂取によって早世した。まったくもって関係の無い話、というわけでもなさそうな…


※以下一部引用(メモ供養)



「…しかしこの映画はいかにナチスに多くを負っていることだろう。ナチスがあったおかげで、われわれはあらゆる悪をナチスに押しつけ、われわれの描くありとあらゆる破倫・非行・悪徳・罪・暴力の幻をナチスに投影することができるのである。このスケイプ・ゴートを、現代の映画演出家がほうっておくわけはない。悪を描く免罪符としてのナチスの効用に隠れて、自分の悪の嗜慾をほしいままに追求することができるのだ。(中略)…『地獄に堕ちた勇者ども』は、正にミイラ取りがミイラになるほど、ナチスの時代の"嫌悪に充ちた美"を再現しているのである」(三島由紀夫、『映画芸術』1970年4月号より)
小野

小野の感想・評価

3.9
ヘルムート・バーガー、写真で見る限りあまり綺麗だとも思わなかったけれど動くと本当に美しいな...。
ブルーアイズに高くてやや短めの鼻、どこか繊弱で空虚な美貌。
造形だけで言えばビョルン・アンドレセンの方がよりノーブルで完成された美貌ではあるのだけれど、だからこそ映像の中で動いて初めて発する輝きの幅は狭いというか(彼はあまりにも「絵画」的すぎる)。バーガーの方がより俳優向きの美貌だと思う。

若き日のシャーロット・ランプリングが出てるとは! 時の流れを感じてしみじみ。

物語はまじで難しかった。
途中止めてWikipediaのお世話になりました。
名前が覚えきれない。描写が格調高過ぎて(婉曲的で)何が起きてるのかよく分からないところがあったり。

ナチス時代の鉄鋼会社の話、と前情報があるから観にくくなるけど、これは単純にある親子の物語として鑑賞する方がストーリーも頭に入りやすい気がする。
寺山修司がこの映画好きってのは凄いわかる。
うみ

うみの感想・評価

3.5
ヘルムートバーガーの魅力が分かった
最後のナチスに染まったかのような出立ちが似合いすぎてゾクゾクした
良いものを着た男たちがやけに汗を流しているのが印象深い。本物の緊張感ある汗だった。
最初から最後までクールでいかにも頭の切れる悪って感じのアッシェンバッハを演じていた人も印象的だったな
そして人体と血が鮮やかすぎて狂気を感じた
ジーナ

ジーナの感想・評価

4.5
初ヴィスコンティ。

僕の敬愛する監督ファビンダーが何十回も観たというので鑑賞。
確かに面白すぎる!!!
登場人物の多さに大混乱するので、一時停止をしてWikipediaを読みながら鑑賞する必要がありましたが、壮絶な内容にうっとりしました。

幼い女の子があんな事になってしまう衝撃的なシーンは脳裏に焼き付く。
中盤ダレるシーンはあるものの傑作!
高校の国語の先生でお世話になったおばちゃん先生(当時還暦手前くらい)がたまに映画を勧めてくれていたのだが、その中の一本。なんでこんなの勧めたんだろうと改めて思った。ナチスが台頭してきた時代を舞台に、政治的発想を踏まえて戦略を決めなければならない大財閥の話。ドロドロドロドロ。ヴィスコンティの中ではわかりやすい方なんじゃない??誰が何したいか割とわかりやすいし、どういう目的かということも割とわかる。あいつの豹変ぶりがすごいね。ふつふつ溜まってたんだろうねえ。あんなおとなしそうだったのに。性的なモラルもガンガン破ってくる。なぜそんなものを高校教師は俺に勧めてきたのだろうか。ナチスってほんと容赦ないな。ひどいな。全編英語なのは気になる。
幼女の手にキスする男。幼女の手には針がもたれている。
慌てて部屋に行きタバコを吸う男。

両親が殺された真実を伝えると、扉に頭を向けて打ちひしがれる青年。

やたら静かな結婚式。時間をあけて中に入っていくとそこには。
ラストは敬礼。
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