アキラナウェイ

アレックスのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

アレックス(2002年製作の映画)
4.4
脳内麻薬が常にドピュドピュ分泌しまくっていそうな激ヤバ監督、ギャスパー・ノエ。約20年前に彼の名を轟かせるきっかけになったのがこちらの作品。

アレックス(モニカ・ベルッチ)という女性とその恋人マルキュス(ヴァンサン・カッセル)。そしてアレックスとは、昔恋仲だったピエール(アルベール・デュポンテル)。

3人の男女に起きた、ある一夜の"悲劇"をエンドロールの逆回しからスタートし、物語の結末から始まりへと時系列を辿っていく斬新な構成で描く。

逆回しの物語りなので、あらすじは割愛。

"時はすべてを破壊する"

エンドロールから始まるプロローグ。

原題は「ひっくり返せない」「不可逆」「取り返しがつかない」を意味するフランス語だが、いくつかの文字が反転している。

上下左右、天地無用、
縦横無尽に動くカメラ。

序盤(物語の終盤)は定まらないカメラワークが特徴的。10-15分程度の長回しを繋げ時系列としては遡っていく構成は、慣れるまでは何が起きているのか容易には理解し難い。しかし、徐々に何が起きたのかが明らかになり—— 。

以下、ネタバレを含むので鑑賞予定の方は閲覧注意。













凡そ9分にも渡るレイプシーンが壮絶…。

モニカ・ベルッチが男に力で捩じ伏せられる。まさに体当たりの演技で挑んでいる。

時よ、止まれ。
時よ、戻れと願えども、
時間は無情にも過ぎていくだけ。

劇中の台詞で「未来の事はもう全部決まっているんだって。予知夢がその証拠」とアレックスが語る。

「夢を見た。トンネルにいた。トンネルは赤いの」とも。

アレックスが通った地下道、彼女がレイプされた地下道の壁は赤だった。

彼女は自分の最悪な夜の予知夢を見ていたのか…!!という事実を後で知る衝撃。そして生理が遅れているという事を告げるアレックス。そうか…妊娠していたのか…。

過去で起きていた事を後で知り、心が音を立てて崩れていきそうだ。

「復讐する」
「いいケツしてる」
「君のアナルに挿れたい」

マルキュスがアレックスに対して終盤(物語の始まり)で囁いていたこれらの台詞も、序盤(物語の終わり)の伏線となっている。伏線の逆回収。

意味のない会話ではない。
未来の事は全部決まっているという事。

ギャスパー・ノエ、やはり天才か!!

物語を時系列順で再構成した『アレックス STRAIGHT CUT』が2020年に公開されているが、僕はこの物語をもう一度観る心臓を今は持ち合わせていない。