イチロヲ

私の中の娼婦のイチロヲのレビュー・感想・評価

私の中の娼婦(1984年製作の映画)
4.0
死別した妻(水木薫)の遺骨を抱えて、小さな漁師町を訪れた中年男性(大林丈史)が、町内を放蕩する謎多き夫人(田坂都)に、生前の妻の姿を重ね合わせていく。「男と女の化かし合い」を題材に取っている、日活ロマンポルノ。NCP共同製作。

浮気相手の存在を黙認しながら、妻のことを最期まで大切にしていた生真面目な男が、訳あって「町のサセ子さん」の立場になっている女性と出会い、その娼婦性に苦しめられる。夏場の伊豆でロケ撮影しており、高低差のある土地が映えている。

冒頭部、行く先々で町人たちの奔放な性行動を目撃していく、ミステリアスな展開がとても面白い。大人たちの倦怠的なセックスと、不良グループに属している少女(朝倉まゆみ)の無邪気な性行動を、鮮やかに対比させているところも醍醐味。

「男は、女を抱けばいいと思っているから、女は嘘をつくのよ」とは、本編の女性側の弁だが、そこには善悪の概念は存在していない。「男は肉で性的欲動を受ける。女は心で性的欲動を受ける」という根源的な性差を提起している作品。
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