リノカタ

ライフ・イズ・ビューティフルのリノカタのレビュー・感想・評価

5.0
かすかな記憶を手繰り寄せようやく見つけた作品です。随分前に見た記憶があったのですが、ようやく見ることがでした…。

舞台は第二次世界大戦前後のイタリア。そこで生きる家族の物語です。戦争ものでは珍しくないホロコーストを扱った作品で、随所に見られる過酷な収容所生活はユダヤ人の苦悩をしっかりと描いています。しかし、何よりこの作品で吸い込まれるのは父親の「強さ」だと思うのです。

お調子者で口が達者な男性グイドは、いつもトラブルを起こしますが憎めない性格。決して威厳があると言う父親ではありません。収容所生活でも彼は弱音を吐いてしまいます。しかし、それは決まって「息子の前」ではないのです。彼の息子ジョズエはまだまだ幼く、活発な男の子。収容所内でたちは嘘をつきます。「ここは素晴らしいところだ」「みんなでゲームをしている」「一等賞は本物の戦車だ」自身も不安な中で息子を勇気付ける父の健気な姿に胸が締め付けられるような思いでした。ありったけの想像力と虚構、そして最大級の愛を以って父は息子の希望と命を守ったのです。

父は息子を生きる糧とし、息子は父に希望を見出していく。過酷な収容所生活で二人の親子は互いに支え合って生きていたのです。

物語の題名を常に考えていました。直訳して「人生は美しい」。あるいは「命は美しい」なのか?そんなふうに考えました。生きることは素晴らしい。嘘であっても本当であっても希望を抱いて生きることはなんと素晴らしいことなのか!たとえ悲劇が待ち受けようと、息子と妻に限りない愛を与えたグイドの人生は美しかったはずです。
リノカタ

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