春とヒコーキ土岡哲朗

デスプルーフ in グラインドハウスの春とヒコーキ土岡哲朗のレビュー・感想・評価

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剥き出しだから分かる、「映画って、面白ぇんだ!」。

すばらしき、ストーリーのなさ。車で襲う、車に襲われる、その映像を見せることだけが目的の脚本。ダラダラしゃべって時間を稼いでカーアクション。それを2回繰り返す。
前半と後半が、車で暴れる殺人鬼のマイク以外に共通したキャラクターは出てこない、全く別の話だ。だから、一本の映画としてのストーリーなんてない。それに気づいたとき、「これは車が暴れるのを見せるだけの映画です」と宣言された気持ちになり、興奮した。

「THE END」の表記で、大笑いした。こいつ、こんなボコボコにされて、この映画、こんな大暴れして、そのまま終わるんだ!!
前半では殺人鬼のミステリアスさもあったが、最後はうるさい間抜けになったマイク。キャラがブレにブレている。前半では、夜の闇から襲ってくる化け物だったのに、後半では真昼間から騒ぐお調子者にも見えた。返り討ちにあい、わめく小物っぷり。マイクもそんなに出来上がった“キャラ”じゃない感じがして、この映画の「剥き出し」感が増す。

カーアクションを見せたくて、あとは蛇足です、という構成。でも、本当にそれだけだったらこんなに興奮させる映画は作れないだろう。バランスがぶっ壊れたように見せるための、絶妙なバランス加減ができているんだと思う。
意味のないガールズトークがそれはそれでリアリティがあるんだけど、そのリアリティを食いつぶすほどマイクが暴れる。そういう風に、意味のない時間がフリとしてちゃんと意味があるように作られているから、こんなめちゃくちゃなのに面白いんだろう。