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マイ・ブラザーのICHIのレビュー・感想・評価

マイ・ブラザー(2004年製作の映画)
5.0

生まれ持った境遇の違いから、母
から与えられる愛の差にいがみながらも、どこかで“兄”を思って生きる弟。

観ている側は、なんだかんだでほんわかしている間にストーリーが進み残りわずかになり、そこからは一気に展開する。

今までの悪い予感を的中させて急転直下。

弟が、たった一度した道の外れた所業の故に、その業を代わりに受けた兄。

最後は今までの“弟”の心の膿ができって、涙で終わった。

ラストエンディングロールでの歌と、写真を撮るシーンが忘れられない。

自分にもあんな兄がいたのかもしれないと思いながら、父母には親孝行をしたいと、そう思わせられる作品たった。


心温まる作品、韓国映画の兄弟ものでは、同じくウォンビン弟役のチャン・ドンゴン兄役『ブラザーフット』に続き、マイベストムービー入りです。

最後、弟に復讐するつもりで間違えてお兄さんをやってしまった、お兄さんの友達だった人は『権力に告ぐ』や『ビッグショット』『悪い奴ら』などで、にっくき悪役野郎から憎めない大バカ巨漢鬼検事役まで幅広くこなす、ふっくらいかつめの役者さん。

この作品ではお兄さんと同じ“知的障害”を持つキャラクターで、その振る舞いの中には、借金とりから自分を守ろうとする母を守ろうとする強い気持ちや、お兄さんを間違えてやってしまったとわかった時の悔やみきれない涙など、“健常”でないからこその必死なものが伝わってきて切なかった。

ウォンビンは『母なる証明』でも親子役で出演しており、その作品でも、この作品でも、母のある種の「息子」に対する狂気的な愛が描かれていた。

これらの作品を観て、当時の自分の母を振り返って、母の狂気はけして自分の母に限ったものではなかったのだとつくづく思うようになった。

『善悪の刃』でも、そういった「母」ゆえの狂気とまではいかないが、感情の限界値、みたいなものが描かれていた。

我が子を、身を呈して産み育てるということが、どれだけ大変なことで、それが何故できるのかというのは、「母」になった女性に秘められている「狂気」に鍵があるのではと考えさせられた。

理屈で言ってもわからない息子たちに最後に刺さるのは、理屈では説明のつかない、言葉には表せない「母」の、渾身の狂気に満ちた「愛情」なのかもしれない。


この作品のタイトル、主軸となるのはあくまで『My Brother』だが、その兄弟愛を描く上で欠かすことのできない「母」の存在を強く感じる、そんな作品だ。


フィルマークス上のカテゴリー表記はサスペンスとなっているが、これはヒューマンドラマ、ですね..
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