MasaichiYaguchi

しあわせカモンのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

しあわせカモン(2009年製作の映画)
3.5
ユキヤナギの白く可憐な花は長く寒い冬を耐え、春の到来と共に咲く。
邦画は年間600本近く製作されるが、なかには「お蔵入り」する作品もあり、この映画はそうした「埋もれた」なかで素晴らしい作品を発掘する「お蔵出し映画祭2011」でグランプリを受賞した作品。
本作は「しあわせになりたい!」と一生懸命頑張るけれど、生き方が不器用で、悪い方、駄目な方に人生の舵を切ってしまう母と息子の物語。
破天荒で天真爛漫な母・扶美江を、鈴木砂羽さんがメリハリを付けて、時にキュートに、時に破滅的に演じている。
息子・哲也は、その成長に合わせて子役を含めた何人かで演じられているが、夫々の時代ごとの心情に共感してしまう。
この似た者親子は、しあわせを求め、互いに愛しながらもすれ違ってギクシャクしてしまう。
そして二人の人生の「浮き沈み」、母は「薬物依存症」で、息子は愛に飢えても満たされず、非行を重ねてしまう「負のスパイラル」を描く。
傍から見れば、彼らの人生は「落ちこぼれ」かもしれない。
だから内容的に多少辛いところが有るが、全体的には底抜けの明るさと笑い、そして救いがある。
それは、どんな状況でも「しあわせになる」ことを諦めず、何処かに希望を見出して進むところに我々が勇気づけられるからだと思う。
そして母・扶美江の息子・哲也への深い愛に心揺さぶられる。
本作の鑑賞後に母親に会いたくなったり、電話をしたくなったりする人が出そうな気がします。