ゆうすけ

マイライフ・アズ・ア・ドッグのゆうすけのレビュー・感想・評価

3.6
切ないけど、必ず明日からのエネルギーになる何か形ないものをもらえた気がする。
でも切ないよ。。
最近、フランス映画に惚れたのに、次はスウェーデン映画です。
仏や英や伊のように人とファッション、街並み全てにおいて、おしゃれが無意識に寄り添っているわけではなく、舞台が田舎ということもあるが、全体的には地味な描写が多く、一目惚れをするような作品ではない。ただ、家具でもその地位を確立している北欧ならではの色使い(日照時間が短い北欧では明度・照度が高い単色を利用し部屋を明るくしている)を子供のファッションという部分でしっかり表現しており、一目惚れではなく、時間を追いながら興味をそそる部分が垣間見え、シーンを追うごとに作品が好きになっていった。ただ、少年の子どもならではの好奇心と無秩序な言動が生み出す母や兄、友への一瞬の非情が、時につかめない雲のような虚無と憤懣な気持ちになった。でも、それがこの作品に、その少年に、また惹きつけられた要因のひとつなのかもしれない。
一目惚れではなく、ただ日々好きが増し、つかめない雲である、ある人を好きになったときのような感覚に似ている。

ストーリーに大きな変化や興味をそそる出来事は起きないが、少年が、母や兄を始め、関わる人々から受け取る愛(優しさ)の形の変化と種類が多いことは作品の魅力のひとつで、勝手に作品中に愛(優しさ)を探していた。
少年が愛のスタンプラリーを片手に、当てもなく、マニュアルもない、極論スタンプを押されていることも気付くことのない、そんな時間を過ごしている作品である。
少年が働くことになったガラス工場においても、物理的な工程での暖かさと素敵な人々が集まった温かさに包まれながら、ガラスという美しいものの、繊細かつ強度が劣るモノに少年の心を重ね合わせ、大人たちがそのガラスを丁寧に作り上げる様は、まさに大人が子供を育て守る、大切な技術と役割の映写と感じた。割れないように丁寧に。割れても作り治すように。
何度も出てくる少年の母に対する“話せばよかった。”は、母だけではなく、全ての大切な相手に対して当てはまる。後悔のないように、大切な人にはいつでも伝えていかなければならない。
ゆうすけ

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