TaiRa

のんき大将脱線の巻のTaiRaのレビュー・感想・評価

のんき大将脱線の巻(1949年製作の映画)
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幾多の機会を逃して来たジャック・タチ作品デビュー、やっと。よく喋るタチ。

フランスの田舎町に移動遊園地がやって来てから去るまでの話。郵便配達人フランソワのドタバタ。後の作品で先鋭化されるサイレント喜劇性も充分に見られる。往年のサイレント喜劇人に影響受けてるのはもちろん、さらに遡ってリュミエール的な部分まで踏襲してる。水を撒き散らすホースを使ったギャグなどが顕著。話の筋は特になく、細かいエピソードやスケッチが次々と連なる感じ。本当にしょうもないギャグも多くて楽しい。フランソワの登場シーンにおける虫のギャグも好き。虫の羽音と芝居だけで作られた笑い。音を使うギャグが上手い。柱が倒れるエピソードから派生した木の軋む音にビビるおっさんの前振り、そしてフランソワの自転車突っ込み天丼ギャグなんかも音が主役。出し物で上映する映画の音声だけで男女のナンパを表現する場面も音ギャグ。自転車を使ったスピード感ある場面も良くて、自転車が独りでに走り出してフランソワが追い掛けるとこなんて最高。蛇行した道を外れて先回りしようとするのは『ポリス・ストーリー』冒頭の元ネタかな。へべれけに酔っ払ってる感じとかも『酔拳』に通ずるし。ジャッキーはサイレント喜劇だけでなくタチも好きだろうし。地元の女の子が祭りの為に背伸びしてハイヒール履いて来るんだけど帰り際に足が痛くて裸足になって帰るショットなんかは凄いタチっぽい情感だなと。
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