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怪談のzoeのレビュー・感想・評価

怪談(1965年製作の映画)
4.5
原作が小泉八雲作品ということで鑑賞。明らかに怖そうだったからギリギリまで観るか迷ったけど覚悟決めて昼間に観た。やっぱり、最近のホラー映画よりも昔のホラー映画のほうがよっぽど怖い。怖さの種類が違うというか。

「黒髪」では、愛と愛ゆえの憎しみ。後悔してもしきれない、ぬぐいきれない過去の過ちが彼を最後まで痛々しく苦しめた。

「雪女」では、愛ゆえの情けが余計な悲しみを生んでいたように見えた。少し意味は違うけれど、口は災いのもととでも言うのかな。

「耳無芳一の話」が一番恐ろしかった。そして、素晴らしかった。物音が表す、そこに見えずとも確かにある恐怖に染まる冷たい空気とわずかな言葉が拙くも観る側にまで伝わってくる当人に張り付いて離れない不安。

「茶碗の中」もなかなかに恐ろしい。小説を読むのが怖くなるような話をよくも短い間に軽々と聞かされた。不協和音のような、そうではないような曖昧なあの音が心に重く響いて恐怖心を大きくさせる。

全て、おどろおどろしかった。少ない言葉と声なき恐怖や嘆き、それ故にひしひしと役者さんたちの演技がどれほどすごいものなのか伝わってきた。

観るひとを視覚的にではなく、感覚的に恐怖に陥らせる映画。
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