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怪談のleylaのレビュー・感想・評価

怪談(1965年製作の映画)
4.3
小泉八雲原作による4作品を映像化。
小林正樹監督初のカラー作品。

恐怖というよりは、人間の愚かさが招く不幸についての教訓のように思えた。古い言い伝えが元なので、ストーリーをどう描写しているかを楽しむべき。

芸術性あふれるセットは圧巻!巨大なスタジオに造られた海、雪山、大広間。雨や吹雪も轟々と降りしきる。壮大なスケールのセットにただただ驚き。

隅々まで心血を注ぎこだわり抜いた冴え渡る画は至宝と言っても過言ではないかも。

1本作るのにも大変な時間と労力なのに、4本のオムニバスという贅沢さ。それぞれの作品に登場する俳優陣も豪華。衣装もシーンごとにこだわっています。

●黒髪(原題は「和解」)

1カットごとに三國連太郎のメイクや衣装が醜く変わっていくさまは見応えがあった。相当時間を掛けたはず。新珠三千代のけなげな美しさが呼び起こす衝撃。今作が一番好きです。

●雪女

仲代達矢×岸惠子を見ているだけでも眼福。ラストは愛情と哀しみ。深い雪をセットで再現しているのが見事。背景の空に浮かぶ眼が、あえて作り物風なのが妖しさを醸し出している。

●耳無芳一の話

今作が一番長尺で、映像にも力が入っている。海に浮かぶ何艘もの船と源平合戦の再現が絵巻も含め素晴らしい。丹波哲郎、中村敦夫、田中邦衛の存在感。怪談というより幻想的な歴史作品のよう。

●茶碗の中

小品ながら話自体が変わっていて面白い。
中村翫右衛門の形相のインパクト。水瓶の中の人が合成にしては驚くほど鮮明で、一瞬の画へのこだわりを感じた。


お金をかけ過ぎて回収できず、製作プロダクションを倒産に追い込んだと言われている。CGなどない時代、妥協を許さない製作者たちの芸術魂を感じさせる作品だった。

この圧で4本は疲れたけど。笑

特典映像も見応えあり。
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