垂直落下式サミング

六頭の黒馬の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

六頭の黒馬(1961年製作の映画)
3.5
鞍を持って広野をひとりで歩いていくのが、我らが主人公。曲がったことが大嫌い。質実剛健オーディ・マーフィー。捕まえた馬が野生でないとわかれば群れに放そうとするし、闘犬をみればかわいそうだと割って入ってケンカを止めてしまう。義の人である。
義人(ぎんちゅ)オーディ・マーフィーは、西部劇においては平均的で無難なヒーローを演じていて、取り立てて魅力的なところはなかったけれど、ヒロインや脇役たちはかなりいい。
主人公たちを高額の報酬で護衛を依頼する夫人は、とても美人でインディアンにケツを叩かれても毅然としている。穏やかで紳士的な男と明らかに家庭に向かない男と、性質のちがうふたりを同伴して旅をするが、その腹には一物を抱えており…、なかなか逞しい。
すごくスタイルの良い女優さんだった。岩山に座って足崩しながら犬をなでなでする場面は、アイコン的なかっこよさ。
『ウィンチェスター銃』や『荒野の追跡』にも出ていたダン・デュリエが相棒として隣にひかえる。良いやつと見せかけて、対立してくるんだろうなと思っていたら、案の定。
コイツが初登場し、主人公を救うため、銃を持った複数人の男たちを無力化するにあたって、全員のガンベルトを外させて馬車に乗せ、その馬車を坂の下に転がして休ませていた馬を逃がしてしまう手際のよさに、百戦錬磨のやり手っぷりを感じた。
不満なのは、見映えするアクションシーンの少なさ。オーディ・マーフィーがほとんど銃を撃たない。インディアンから逃げるときにはじめて拳銃で牽制するんだけど、今までおとなしかったんだから、その男がついに銃を抜くときは、もう少し劇的に演出してほしかった。それに、残弾数えらんないガンマンとかプロじゃないから、どんくさいところは見せないでほしいな。
ラストスパートでは、いくつかの連続したアクションを畳み掛けたあとで、ついに避けられぬ宿命の決闘となるのだけれど、この緩急のつけ方が極端すぎて盛り上りを削いでいたと思う。
一番好きなのは、インディアンから逃げるシーン。馬の背中にしがみついた犬が落ちそうでドキドキ!いぬうう!犬がヤバイと思ったら、女のほうが落馬して、これを助けに行くときのオーディ・マーフィの身のこなしの見事さにときめく。