よっしー

ユリシーズの瞳のよっしーのレビュー・感想・評価

ユリシーズの瞳(1995年製作の映画)
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「ユリシーズの瞳」

ギリシャの映画監督Aは、マナキス兄弟が撮影した幻の映画の未現像フィルムを探すために帰国する。ホメロスの「オデュッセイア」をモチーフに、幻のフィルムを探して7カ国を行脚するオデッセイ的要素と、20世紀のバルカン半島の歴史を振り返る要素という二つの要素から成り立った作品。
テオ・アンゲロプロスとハーヴェイ・カテイルという組み合わせがなんとも意外なのだが、中身自体はいつも通りのアンゲロプロス監督作品だった。私は高校は地理選択(浪人時代は倫理)でバルカン半島の歴史など全く知らないし、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争も生まれる前の話なので、全く知らない世界の話。
正直、戦争映画という観点で鑑賞したとして理解できるかと言われたらかなり厳しいと思う。20世紀のバルカン半島において、どのようなことが起きたのか、ある程度の知識が必要な映画である。
ストーリー自体はシンプルであらすじの通りなのだが、恐ろしいほどスローテンポだが、奇抜な演出をぼーっと眺めていると直ぐに置いて行かれてしまい、なかなか着いていけない。劇場のような集中力が保証された環境での鑑賞でないとかなりきつい。
それでも、今まで見て来た3本のアンゲロプロス作品の中では一番飲み込みやすかった気もする。ハーヴェイ・カイテルが出ていることで、多少なりとも本作に対する苦手意識が和らいでいるということもあるかもしれないが、美しく、細部までこだわった映像と大まかにはシンプルな物語構成で、映画自体は観ていてそこまで退屈というわけではなかった。
6年の歴史を一瞬で消化するダンスシーンとか巨大なレーニン像の様な印象的なシーンもい多いし、その場面場面において「何か」を象徴しているのではないかと考えさせられるようなシーンも多くて楽しかった。まぁ、知識がないからあくまでも推測でしかないのだが。この作品はいつか劇場で再鑑賞したい。それまで評価はちょっとできない。あとそれまでに、もうちょっと神話とバルカン半島の歴史については調べないといけないな。
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