ワルツのように踊る過去と記憶と歴史。
溶けだして茶色く濁った雪を踏むぐちゃっとした足音が、わたしの追憶にまでその湿り気を滲ませる。
散り散りに失くなった大切なものを甦らせるように幻のフィルムを探す果てしもない旅。
行き場のない望郷の叫びと二度と戻らない愛を吸いあげるような激しい接吻は、漆黒の海へ向かう河に浮かぶ月のように儚く消えてゆく。
立ち上る黒煙の隙間から空を見上げ、僅かばかりの青にむかって祈るように両手を広げて仰いだ。
絶望しているひまもなく、霧を纏いそこに音楽を響かせ、憎しみが通りすぎるのをどこまでも待っている。