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フィツカラルドのあのレビュー・感想・評価

フィツカラルド(1982年製作の映画)
4.8
本当に船が山を登ります。

一攫千金ではなく、その先のオペラ座を夢見ているところに、フィッツカラルドの単なる入植者じゃない面白さがありました。攻撃的な部族を取り込んで山を越えるというあまりにも見切り発車すぎる計画でしたが、冒頭に一人のオペラ歌手に会いにくるために遥々アマゾンを遡上してきたことを考えると、当然のことのように思いました。 

そして蒸気機関ではなく、オペラが部族達に神の国の理想を確信づけ、部族を山越えの原動力としてしまうこと、さらに急流を流されて理想が潰えたかと思いきや、ついにカルーソーの一座を招き寄せることに成功し、これにてフィッツカラルドの夢と、部族達の信仰が結実すること、ここに船の傷だけが物語る壮大な物語を乗せるうまさにただただ感激です。

部族は氷も知らないが、フィッツカラルドには密林の摂理が分からない。そんな中、音楽だけが共通言語になってしまう。「音楽の力」がどうたらいう音楽番組がありますが、単なる企業の思惑の結晶みたいな番組がそんな言葉を使うなら、プロデューサーやらディレクターやらが船で山を越えてから使えと思ってしまいますね。

カメラワークが少々粗々しいのは難点ですが、本当にどうやって撮ったんだ...?これは監督自身がフィッツカラルドなのでは...?というような言葉しか出なくなります。
あ