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緑の光線のフォスフォのレビュー・感想・評価

緑の光線(1986年製作の映画)
4.5
最高すぎる。マジで天才。ロメールは冗談抜きで赤と緑の使い方を自家薬籠中のものにしちゃっている。デルフィーヌは赤っぽいものに憧れていると同時におそれている。それはもう、肉が嫌いだとか、友人知人がたのしくビーチで遊んで桃色の肌をさらしているなかで、彼女だけがひとり青とか緑のトップスをつまらなそうに着けていることからも明らかだ。けど、デルフィーヌの衣装には、ちいさな小物としての赤がよく付属している。そして、そういうときに決まって、このさむざむしい青色とか黄色の孤独からのがれる契機、つまり異性から言い寄られるイベントが起こる。しかもその男たちもみんな必ず赤色の衣装とか小物を着けている。この細部。

つまり彼女には赤を掴むチャンスがあるということだ。赤は情熱とか恋とか愛というものだ。だが、彼女はそれに焦がれつつも融和をはたすことができない。デルフィーヌはまいどその機会を拒絶してしまうから。では、彼女はどうすればしあわせになって、赤と融合できるのか?それは占いをやってる彼女の友人がいうことや、ヴェルヌの「緑の光線」の挿話からもわかるとおり、緑に導かれたうえでの赤色を手に入れなければならないのだ。

そして圧巻のラストシーン。何かの恩寵のようにデルフィーヌのまえにあらわれる「緑の光線」という店の看板は、よくみてみると緑の文字を赤色の枠が囲っている。それから、さいごの太陽が沈む間際に桃色に染まる二人の顔と、一瞬うつる「緑の光線」。ここでやっと、赤と緑がかんぜんに融和してデルフィーヌは情熱を得ることができる。なんという細やかさと完成度。エリックロメールは色使いの天才だ!
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