【こじらせ女子のグリーン革命】
エリック・ロメール監督・脚本による1987年の作品
〈あらすじ〉
パリで秘書として働くデルフィーヌは友人とバカンス旅行の予定を立てていたが、目前になって友人にキャンセルされて落ち込む。バカンス中もパリにいるのが嫌なデルフィーヌは、友人であるフランソワーズの誘いでシェルブールへ旅立つが、環境になじめず早々にパリへと戻る。そして今度は元恋人が働いている山に出かけるが、一人でいる時間の孤独感に耐えられず再びパリへ戻る。そして3度目の旅先としてピアリッツの海を選ぶ…。
〈所感〉
すごく好きですねぇ!ロメール監督作品はまだこれが2作目だが、本作は16mmカメラによる即興的撮影・演出で、周りの楽しそうな会話と対照的な主人公のこじらせ系女子デルフィーヌのセンシティブな心理を明確に浮き彫りにしていて、とても見応えがあった。なんてことない会話劇なのだが、デルフィーヌのラッキーカラー緑への執着や周りの女性とは一線を画す男性観からは強い女性像が見えたかと思えば、一緒に旅行してくれる彼氏・友達がいないことによる孤独に耐えられない弱い女性像も窺えて興味深かった。実際近くにこんな女がいたらめんどくさいだろうが、遠くからチラ見するのはすごく面白い。タイトルがジュール・ヴェルヌの小説『緑の光線』から取っていたのは知らなかった。ラストのグリーンフラッシュは彼女の努力が成就したかのような、もしくは吹っ切れたような幕引きで映像としてもストーリーとしてもとても美しいものだった。