パンケーキレンズ

ラビット・ホールのパンケーキレンズのレビュー・感想・評価

ラビット・ホール(2010年製作の映画)
4.5
大きな大きな、喪失
そして、小さな小さな再生の繰り返し

そこには、正しい答えなんか無くて
だから、全ての事に間違いはなくて
登場する人物の、母親の、父親の、家族の・・・グループセラピーに参加しているホンの端役の人たちの言動までも
隅々までに魂の宿った、生きている人の気持ち、そのものがうごめいている感動的な作品でした

原作となった戯曲に惚れ込んだという二コール・キッドマン
彼女が画面に映るたび、全く違う表情をしている
繊細なテーマを、大胆な感情表現で
複雑な感情を、彼女の見事な表現力で
神の世界に癒されなかった彼女が
最終的には、科学寄りの世界で救いを得られた
それがまた、妙に神秘的な感じもした
 
ある人にとっては救いとなることが、ある人には悪夢にもなる
感情は、気持ちは、時に自分でも処理しきれないくらい理解不能となってしまうから
溺れそうなほど、苦しくなって、気が狂いそうになる
正気じゃない言動
それを裏付けるのは、想像を絶する喪失の悲しみ
二コールの言葉一つ一つに、母親の優しさと強さ故の孤独な気持ちが溢れている

見えない気持ちを、生きてる気持ちを、何処までも丁寧に綴った作品

ラストの、夕焼けを見つめる一組の夫婦の姿が、何故だかとても美しかった・・・