イチロヲ

グリードのイチロヲのレビュー・感想・評価

グリード(1924年製作の映画)
4.5
粗暴な性格を叩き直し、幸せな結婚生活を手中にした男が、極度の倹約家へと変貌した妻によって、人生の浮き沈みを体験する。フランク・ノリスの原作を映像化している、サイレント期のヒューマン・ドラマ。「Greed」は強欲を意味するワード。

誰しもが胸中に秘めている「狂気性」の表出を、本能と自我のシーソーゲーム、ひいては金の亡者の系譜を通して描いていく。「所詮、人間ってこんなものだよなぁー」と呟きながら、サラリと真理を説いているような作風になっている。

主人公の新妻は、宝くじの高額当選により大金をゲット。ところが、「貯蓄を崩したら自分自身が壊れてしまうかも」というパラノイアに陥り、倹約家としての狂気性が表出。本当は金持ちなのに、意地でも貧乏暮らしを続ける。この倒錯描写が、半端なく面白い。

終局が近づくと、結婚以前の粗野な人間性に戻りつつある主人公と、主人公に嫉妬する妻の元カレが対峙。そこに金があるから、ただただ欲しいだけ。欲の皮が突っ張った人間たちのトランス状態を、じっくりと観察することができる。
イチロヲ

イチロヲ