まぬままおま

シンプルメンのまぬままおまのレビュー・感想・評価

シンプルメン(1992年製作の映画)
5.0
ハル・ハートリー監督ロング・アイランド・トリロジー第三作。
90年代アメリカのインディーズを盛り上げたハートリー監督。
物語は面白いし、エリナ・レーヴェンソンは可愛いし、ダンスシーンは最高だし、ファッションも素敵だし、かなり好き。

本作はケリー・ライカートが1994年に制作した『リバー・オブ・グラス』とテーマ性を同一にしている。ただし本作は1992年に制作されており、ケリー・ライカートが引き継いだとみるほうが正しいのだろうけど。
そのテーマ性とは「ロードの無いロードムービー」、目的が達成されることのない挫折のロードムービーである。

本作では、政治犯として半ば英雄視される父を探しに、兄のビルと弟のデニスが旅をする。ビルとデニスはどこにでもいそうなやんちゃな青年と大学生である。そんな彼らが旅の道程でケイトとエリナに出会う。そして彼女らと過ごしているうちに、ビルはケイトに惹かれ、デニスはエリナが父の恋人であることを知るが…。

ビルとデニスは父を探し出すことに成功するが、旅を経て成長するわけではない。そして父は老いてなおアナーキストの本を読むほど「若さ」に満ち溢れているし、エリナという女はデニスではなく父の手中にある。彼らは倒すべき父に圧倒され、乗り越えることができないのである。まさにロードなきロードムービー。ビルは来た道を帰ることしかできない。
しかもビルは警察に捕まり、ケイトと愛を成就させることもできない。まさに挫折の映画なのである。

独特の映画音楽も相まって、叙情的な雰囲気が醸し出されるハートリー監督作品。もっとみます。

蛇足
最初にビルらが訪れる電話ボックスで出会う少女のファッションがかなり好き。

追記(2023.11.5)
衣装にケリー・ライカート関わっていることに最近知ってびっくりした。衣装が素敵なことの意味が分かった。