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壁あつき部屋のJimmyのレビュー・感想・評価

壁あつき部屋(1956年製作の映画)
3.8
原作=BC戦犯手記を安部公房が脚色した物語を映画化した小林正樹監督作品であり、「終戦4年後」すなわち戦犯の裁判が一段落した時代から物語が始まる。

巣鴨プリズンに収監されているBC戦犯たちは、戦地で上官に反抗できずに原住民などを殺させられた過去を思い出しながら「壁あつき部屋」の中に居る。

とりわけ気の毒なのは、戦地で原住民に優しく食事などを振る舞ってもらった時に「ここを立ち去る時に、この原住民を殺しておかないと敵に通報する虞がある」と言う上官(小沢栄)に一度は反対した山下(浜田寅彦)だったが、「私の命令は、天皇陛下の命令である!」と強要する上官に逆らえずに、原住民を殺してしまった。
しかも、この上官、後日の裁判で「私は止めろと言ったのに、こいつ山下が勝手に原住民を殺してしまったのです…」などと証言する有り様。

この上官を小沢栄が演じているのも、適材適所。

また、岸恵子が汚れ役に初挑戦しているのも、なかなかグッドであり、小林正樹監督の初期作品から出演している。

この作品途中で「戦争が罪なんだ!!」というセリフを登場人物に発言させているあたり、小林正樹監督の後年作品『東京裁判』に通じる反戦気骨を感じる佳作である。
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