りょう

蛇イチゴのりょうのレビュー・感想・評価

蛇イチゴ(2003年製作の映画)
2.8
 この作品は、西川美和監督の過去作として10年前くらいに1回目を観ました。デビュー当時から脚本が秀逸ですが、個人的にこの作品の演出を好きになれません。意図的なものかわかりませんが、どうにも嫌悪感を伴う描写が少なくないからです。とりわけ倫子の祖父の描写です。認知症である彼と介護する家族の境遇を表現するためかもしれませんが、食事のシーンの咀嚼音が耐えられません。倫子の婚約者である鎌田を招待した夕食のモノクロ映像に重なる大音量の咀嚼音は、いったい何を表現しようとしたものなのか理解する気にもなれません。
 これも個人的な好みですが、鎌田を演じた手塚とおるさんの妙にいやらしい顔立ちが苦手です。しかもあんな性格の役柄なので、倫子が彼のどこに惹かれたのか理解できません。こういう苦手な描写の印象を最後まで引きずってしまうので、後半の演出は素晴らしいと思いますが、どうしても作品そのものを好きになれません。
 唯一まともな登場人物である倫子は、つみきみほさんの精かんな顔立ちが役柄にぴったりで、性格的にも共感できますが、序盤の教室で生徒を断罪する場面や兄を嘘つき・犯罪者と決めつけるところは、ちゃんとした根拠もなく正義を振りかざしているだけです。ある意味で最も偽善的な存在だったのかもしれません(断罪される生徒を演じているのは子役時代の染谷将太さんです)。
 ちなみに、倫子の父のセリフにもありましたが、学校の教師は、大学を卒業してすぐに学校で就職してしまうので、学校以外の組織やコミュニティに適応できない傾向があります。親族や知人に何人かいますが、自分や家族のトラブルを解決することが信じられないほど下手だったりします。
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