そうすると「芙蓉鎮」でもこの足を洗う場面が映り込むのはそういった意味合いがあることが改めてわかる。このなんでもなさそうな老人と女のワンシーンに、性的なものいわゆるエロチシズムが情景にあることがわかってくるのだ。やはり映画と言うのは、いろいろな情報を知ってみるとなるほどなと思うものだ。そしてこの作品冒頭にボロ家に寄ってきたその女が食べ物を分けてもらおうと近寄った瞬間に老人の犬に思いっきり威嚇され猛烈に吠えられるシーンがあるのだが、なんとも不条理である。その前に老人と犬はご飯を食べていて、その女は犬以下であると言うような演出がなされている。このシーンで中国映画とはまるっきり違う要素を持つチェコ・ヌーヴェル・ヴァーグの傑作の1つとして私のALL TIME BESTに入れているネメッツの「夜のダイヤモンド」のユダヤ人青年二人が、犬が餌を食べていて自分たちは何も食べていないことを知って不意に笑ってしまうシーンを思い出してしまった。