ケーブルテレビに加入していたときに観た。
監督作品はこの映画が初体験だった。衝撃を受けたのを覚えている。
職場の厨房を定点で映している。画面外で男が暴走している。それを煽るようにやかましい音楽が鳴っている。いかにも屈強そうな同僚が暴走する男を静かに止めに行き、静かに失敗し、静かに立ち位置に戻る。
(なんだこのターン制みたいな動き……)
(やかましい音楽に対して、登場人物のテンションがついていってない……)
そこから観ては巻き戻してを繰り返し、30分くらい映画が進まなかった。
路面電車を運転する夫と、その後ろで立つ妻の二人だけの空間は、圧倒的な多幸感だ。無感情的な演技がすごく効いている。
自分はプロレタリアものが苦手だ。プロレタリアものの「しんどさ」が、根っからの仕事嫌いである私のみぞおちにメリメリくるからだ。
だが、この監督の世界観に通底する「おかしみ」により、へその下を軽く押してくる程度で済んでいる。(そして私の便通はよくなる)