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浮き雲のmotoのレビュー・感想・評価

浮き雲(1996年製作の映画)
4.3
配色がまず素晴らしい。赤、青、黄色を基調とする画面もあれば、褪せた色調で統一するときもある。どちらも絵として美しかった。

フィンランド人特有の気質なのか、アキ・カウリスマキ作品の登場人物特有のものなのかわからないが、皆図体がでかく、のっそりとしていて、感情の大きな起伏もない。いわゆるスタティックということだ。

それがむしろ面白い。夫婦はいっときは落ちるところまで落ちてしまうのだが、すっからかんになっても感情を取り乱すことはない、淡々としている。そしてその出来事を作品も淡々と描く。
夫は静かに肩に手を置く。そしていつも帰りに花束を妻に持っていく。どれだけ貧しくなろうとも。そこに胸を静かに打たれた。こういう男でありたい。

無口で雄弁な作品。間が面白いし、シーンの切り替えも静かである。登場人物が無口な代わりにBGMの音楽がその時のムードや人物の心理などを表してくれるような使い方をしていて巧みだなと思った。

他の人にもオススメしたい作品だ。
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