キッチー

ロバと王女のキッチーのレビュー・感想・評価

ロバと王女(1970年製作の映画)
3.7
ドヌーヴ×ドゥミ監督×ミシェル・ルグランのコラボレーション作品は1963年「シェルプールの雨傘」、1966年「ロシュフォールの恋人たち」、1970年「ロバと王女」、1973年「モン・パリ」と続きますが、ミュージカルからコメディドラマに作品が徐々に変化しているのが面白い。美しいドヌーブの20歳から30歳までの変遷が見られるのも嬉しい。

今回は、その第3弾となるシャルル・ペローのおとぎ話「ロバと王女」を観賞。
ミュージカル部分は少なめ、舞台装置を見せるためか引きの映像が多く、映画だけど演劇的。
でも、相変わらず色彩は素敵で、青の国の深い青、赤の国の炎を思わせるような赤、森にある小屋の緑、そして締めるところでは、白の衣装で効果的に魅せる上手さ。
ドヌーブが着るドレスが宝石の光でキラキラピカッピカッしていたのもお見事!でした。

物語は、
病で早逝した青の国の王妃が遺した「私より美しい女性となら再婚を許す」という言葉を守り美しい女性を探そうとする王様。なかなか見つからない女性、とうとう王様は禁忌を犯し美しい自分の娘を王妃にしようと求婚する。
父親への愛と禁忌の板挟みとなり悩んだ姫は、森の妖精に相談し、王様に無理難題を言って断ろうとする。空の色のドレス、
月の色のドレス、太陽の色のドレスと難題を言ってもへこたれない王様。ついに姫は王様が大切にしている唯一無二の存在であり宝石を生み出す(排泄する)ロバの皮を使って出来たマントが欲しいと言い出すが、それすらも実現してしまう。やむなく姫は妖精の手引きで城から逃げることに...
城から逃げた姫はロバの皮を被って、森の中の小屋に住み下女として生活することになるが、そこに赤の国の王子が現れ...
といったお話。以後もとてもおとぎ話的な展開が続いていきます。

王様を演じたジャン・マレーがいい。父親が娘に求婚という、とんでもない役柄にも拘わらず、さらりと演じていて、あまり嫌悪感を感じなかった。演劇的でユーモラスな部分も多かった。困ったお父さんという感じでしたね。
ドヌーブの葛藤する姿もユーモラスで楽しそうにお菓子を作るシーンも良かったな~♪ロバの皮を被るというのも斬新でした。ジャケ写もなんか芸術的な感じすらして、なかなか良いです。
後半は赤の国の女性全部を巻き込んだ話になっていて、色々な人が出てくるのもいいですね。そして主要人物が一同に集まるラストも綺麗に纏まっていました。

おとぎ話なので、話はシンプルで分かりやすく観易い映画。単体では前2作の方が好みですが、ドゥミ監督の色々な試みのひとつと考えれば、出来は悪くないし、別のファン層にも指示される作品になっていたと思います。
楽しい作品でした。
キッチー

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