キッチー

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのキッチーのレビュー・感想・評価

3.8
変化、変化、変化. . .
科学の進歩によって社会が進歩し、価値観も変化していく. . . 人類は幸せになったのか、それとも幸せを失ったのか. . .
世の中、変化を楽しめる人ばかりではないのだ. . .

時代の変化に翻弄されながらも、登場人物たちが各々のやり方で変化に対峙していく人間ドラマ。実際にハリウッドで1969年に起きたシャロン・テート事件(ロマン・ポランスキー監督の二人目の奥さんが殺害された事件)にヒントを得たフィクション。実在した人物(ブルース・リーやイースト・ウッド)も出てきたり、当時のハリウッドの雰囲気を彷彿させるタランティーノ監督9番目の作品。

この映画の主人公リック・ダントンはハリウッドの西部劇全盛時のスターだったが、急激な時代の変化にいつの間にか取り残されてしまった一人。そんな主人公をレオナルド・ディカプリオが見事に演じている。落ちぶれて、悩み、酒に逃げる、そんな人間にも役者のプライドだけは残っていた。主役とは正反対の悪役の演技をもらってようやく一息、でも、満足に演じられない。錆び付いた演技に絶望するリック。しかし彼の俳優魂は錆び付いておらず. . . 自分への激しい怒り、感情の変化を感じさせるディカプリオがいい。
そして彼に寄り添う専属スタントマンのクリフ・ブースを演じるブラピもよかった。無骨で強いので、些細なことには動じない、でもリックとの距離感もベッタリの親友というより、自然な信頼感を醸し出していた。信頼感といえば、彼の飼い犬との信頼関係もまた、観ていて微笑ましい。

ハリウッドでは作られなくなった西部劇は、その後、イタリアでスパゲティ・ウエスタン(マカロニ・ウエスタンは淀川長治さんの造語)てして花開いていく。ここでも時流に乗っていく人、乗れない人の明暗が分かれていくのは面白かった。

度々小ネタが挟まれる作りで楽しませてくれる作品だけど、ちょっと大人しいかなと思っていたら、終盤のバイオレンスシーンでタランティーノ監督の本領発揮といった感じの展開になり、楽しかった(笑)

それにしてもデカプリオ、ブラピはどの場面を切り取っても絵になる。二人の演技もたっぷり堪能出来たので、長尺(161分)も気にならず。楽しめました。
キッチー

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