ミシンそば

オープニング・ナイトのミシンそばのレビュー・感想・評価

オープニング・ナイト(1978年製作の映画)
3.9
本当は「こわれゆく女」も観るつもりでしたが、体力の限界が来たので今日は二本で勘弁しておいてやるとしよう(震え声)。
年を取るとランタイムが長いものばかりを映画館で観るのが難しくなる。
これも衰えの一つか。

この映画も、目の前で熱狂的なファンの少女が交通事故死し、そのトラウマと自身の老いとで精神的に衰弱してゆくジーナ・ローランズの演技を拝む作品と言っていいだろう。
彼女が演ずるマートル・ゴードンは、ファンの少女が死んだ年齢を自身が無敵だった(意訳)年だと述懐しているだけあって、何でもできる年齢だからあの少女は熱狂的に自分を追っかけてきた、でも死んで何にもできなくなった。
その矛盾を自分の心の中で上手く整理できないなら、心が崩れても仕方がないよな。

マートルにとっての気のいい仲間は、ほとんどカサヴェテスファミリー総出演(カサヴェテス本人を筆頭にマジ家族も数人出演)。
ピーター・フォークとシーモア・カッセルもカメオ出演してる。
顔が、あまりにも分かりやすい(ピーター・ボグダノヴィッチは顔をよく知らなかったから気付かなかったけど)。

一方で、他の作品をまだまだ観ていないから軽々には判断できないけど、ジョン・カサヴェテスの自身監督作に出る時の役者としてスタンスの方はよく分からなくなった。
正直、影を見失ったような気分に陥っている。気配を分散されたような感じだ。
彼はよく自分の監督作に出たら3rdクレジットあたりに甘んじるし、立場を弁えた立ち振る舞いを自分に宛がう。
チラシの「唯一の夫婦役」って表記にも含みがあったが、飽く迄劇中劇での役割なんね。
カサヴェテス演じるモリスは、ローランズ演じるスター女優のマートルに対して自分は端役に過ぎないと自嘲するし、作品内での影も薄い(実質、主演男優の座はギャザラに譲っている)。
でも本興行のオープニングナイトでの掛け合いは実生活での夫婦でなければ成り立たないレベルで息が合っていたから、二刀流(脚本も合わせたら三刀流)でやっていってたカサヴェテスの目指していたであろう最高到達点が、自分の中でどこか分からなくなってしまった。
「ラヴ・ストリームス」を観たら多少答えに迫れるのだろうか。

最後に、霊媒師に泣きつくくだりは飛躍し過ぎだと思った。
でもそのあとマートルが暴力でトラウマを払しょくするところは最高にカサヴェテスだったなぁ。