全編に渡って、作り手のセンスに完全に魅せられる。
映像、音楽、台詞、テーマ性。
無国籍で近未来的な世界観だが、その独特さは同設定の従来の映画とはどこか異なる。
そして緊張と緩和の絶妙なバランス。
この映画に漂う匂いや佇まいが、自分の好みと共鳴する幸福感がたまらない。
本作の主人公たちは“カウボーイ”と呼ばれる賞金稼ぎだ。
金のために、危険も顧みない奴ら。
彼らは決して他人を助けるため、平和を守るためといった大それた理由で行動しているわけではない。
あくまでも自らのためである。
そして、同じ目的のために一匹狼のような人間が集っている。
なので、特に仲間意識などは持っていない。
でも、結局はそのような姿勢を取りながら、帰っていく場所は1つしかない。
自然と役割分担され、結果的に協力して目的を達成していく様は痛快である。
そんな彼らが追う男も一筋縄ではない。
バイオテロを試みるこの男はただの悪ではない。
虚無的で厭世的な不思議な佇まいをしている彼は、影を伴いながら、同時に聖者のような神々しさも兼ね備えている。
本作に登場する人物は皆、不思議な存在感を放っている。
正義や悪といった単純な二項対立では語れないような存在。
口数が少なく、孤独を身に纏った彼らからは、どこか無常観のようなものも感じられる。
そして、クールでドライな演出が、ハードボイルドな匂いを生み出すことに見事に成功している。
煉獄を連想させる儚くも美しい世界。
そこは天国でも地獄でも現実でもない。
そんな唯一無二の世界観に、ひたすら酔いしれる。