この映画を観てヴェネチアへ行って見たいと思った人って多いと思います。舞台は冬ですが、観光シーズンを過ぎ閑散とした冬のヴェネチア。本作を盛り上げる大きな要因の一つです。
プロローグがまた見事。雨上がりの湿った池の周りで遊ぶ子供達とその様子を気にかけながら室内で自分がこれから手がけるヴェネチアの教会の修復のために教会内の写真をスライドで見る夫と子供の質問の答えを百科事典で調べながらくつろぐ妻。
スライドに溢した水が赤く滲み出し広がる光景に何かを察知し外にでる夫。そして悲劇。
この序盤のインパクトから、ヴェネチアの寒々とした景色への移行は、否応にも不安を増長します。その後目にするものの全てに不吉さを感じますが、凍てつく風景の中にも主人公の2人の体温が不思議と感じ取れるというなんとも言いようのないニコラス・ローグの創り出す映像とピノ・ドナジオの音楽のマジック。
多くを語るより、ホラーファンならずとも見逃して欲しくない傑作です。