かつて人気子役だった”ベビー”ジェーンはいまや酒浸り。
一方、大人になってから人気女優として引っ張りだこだった姉ブランチも、今では車椅子生活を余儀なくされている。
近所では「姉の足が不自由になったのは妹のせいだ」ともっぱらの噂で・・・。
ゴミ箱に捨てられたブランチ宛のファンレター。
可愛がっていた鳥は、いつのまにか冷たくなって朝食の皿に登場する。
主治医に連絡しようにも電話を没収され、隣人に助けを求める手紙はジェーンに読まれ、ブランチを心配する家政婦は暇を出され厄介払いされてしまう。
空腹に耐えかねたブランチは、ジェーンの部屋でチョコレートを貪り食う。
化粧台の引き出しの奥にはジェーンがブランチの筆跡をまねて切った大量の小切手が隠されていた・・・
子役時代の舞台を再現しようと衣装を見繕い、伴奏者の求人広告を出すジェーン。
その外出のすきに、階下の電話まで降りようと試みるブランチ。
動かない足を両手で持ち上げ引きずりながら、腕の力だけで1階に降りていく。
少しずつしか降りれないもどかしさといつ妹が戻るか分からない恐怖に大量の汗が吹き出す。
ようやく受話器にたどりつくも、ガレージからエンジン音がきこえ・・・
「妹の言動がおかしいんです。早く家に来て!」
そこへ台所の扉が音もなく開き・・・
どうもおかしいと怪しむ家政婦が家に忍び込むと、ブランチの部屋には鍵がかかっている。家政婦は部屋をこじ開けようとするが、そこへ外出していたジェーンが戻ってくる。
そんなところに置きっぱなしにしてたらやばいんじゃない・・・?手に持っといた方が良くない?と不安を煽るように大写しになるトンカチ。扉が開くとベッドには両手を縛られたブランチ、その目は大きく見開かれ、必死で何かを訴えている・・・
何度もジェーンにもみ消され、なかったことにされるブランチのSOS。
はじめは「処女の泉」レベルの嫌がらせだったのが、どんどんエスカレートしていく。
その一方で、子役時代の一番輝いていた自分を忘れられないジェーンは、古いスクラップブックを読み返し、あのとき歌ったナンバーを何度も口ずさみ、ブランチに思い出話を聞かせる。
白い砂浜に芋虫のように転がるブランチと、真っ白な衣装で駆けまわるジェーン。
大きなアイスクリームを両手に持ち、たくさんの人に囲まれてくるくると踊る、そうあの夏の私のように。
そこから急にカメラが引いて、神の視点で冷ややかに映し出される映像が現実を呼び戻す。無邪気さと切なさが交錯するラストショットにひたすら痺れる。
( ..)φ
生きたカエルをサンドイッチに挟むといういやらしさ満点の「処女の泉」が大好きなのですが、「何がジェーンに起こったか」はそんな処女の泉チャンスが2回もあって、もうそれだけでお腹いっぱい。そしてブランチがフリーダカーロに見えて仕方がないという悲喜劇旋風が私の中で巻き起こりました。
届きそうであと一歩届かないSOSもあまりに不条理だけど、かつてのナンバーを歌いながら鏡に映る今の自分に絶句するのも同じくらい残酷だよなと思う。
アイスクリームを買うジェーンがほんの幼い少女にしか見えなくてすさまじく感動した。