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フューリーのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

フューリー(1978年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

元アメリカ諜報員ピーターは誘拐された息子ロビンを追って、シカゴへやってくる。ピーターの同僚だったチルドレスは超能力者だったロビンを諜報活動に利用しようと企んでいた。一方、シカゴで暮らしていた少女ギリアンもまた超能力の持ち主だった。ピーターは彼女の存在を知り、協力を得て、息子を捜し出そうとするが…。

政府の秘密機関に拉致された超能力者の息子を救おうとする父親の奔走を描いたブライアン・デパルマ監督のSFスリラー。
同監督の傑作「キャリー」の姉妹編ともいえるサイキック映画。
超能力の発動描写が素晴らしい、と同時に超能力自体に恐怖を覚える作品になっている。

研究施設でロビンに起きた事故をサイコメトリー能力で見てしまうギリアン。
その映像が彼女の周囲をグルリと囲み、過去の出来事をスクリーンプロセスで見せる場面は、デパルマ監督らしくカッコいい。

一方、誘拐されたロビンは秘密機関に実験と投薬を繰り返され、精神的に爆発寸前まで追い詰められる。
遊園地の遊具をサイコキネシスで破壊したり、父親を襲ったとされるアラブ人を能力で空中に浮かべ、グルグルと高速回転させて失血死をさせてしまう。
彼の怒りと壊れてしまった人間性がダイレクトに伝わる残酷さと美的センスが融合したシーンは見ものだ。

そのほかの超能力のシーンもそうだが、超能力が発動すると、その人間は理性が働かなくなり、暴走する怖さがあるのだ。

しかし、話の展開は残念な所が多い。
ピーターとチルドレスが所属していた秘密機関がどういうものなのか?
超能力者を集めて具体的に何をしたいのかが不明なため、今ひとつ話が盛り上がらない。
そこは敢えて描かないことで、マンガ的な荒唐無稽な展開を避けたかったのかもしれない。

だが、欲しくもない能力を得た超能力者の悲哀なのか、超能力を悪用しようとする巨悪を倒そうとする勧善懲悪なのか、作品のテーマの焦点が定まらないのは、やはり残念。
父親ピーターはただ息子を追う、組織から追われるだけであり、時折コメディリリーフのようにも見えてしまう。

クライマックスは、人を殺した罪に苛まれたロビンの投身自殺と、息子を救いたくても救えなかったピーターが周囲を敵に囲まれて「もはや、これまで」と父が息子の後を追って身を投げる悲劇的な展開に。

そして生き残ったギリアンを利用しようとするチルドレス。
突然“You go to hell”と叫んだギリアンはサイコキネシスでチルドレスの身体を木っ端微塵に爆破するという呆気に取られるエンディング。

超能力の暴走の恐ろしさと、最後にはそれをコントロールできてしまった恐ろしさ。
後に「スキャナーズ」や「アキラ」といった超能力映画に多大な影響を与えたのでは、と思うのは考えすぎか?
人体大爆発のショックによって、脚本の粗を帳消しにし、記憶に残る作品となったデパルマ監督の怪作。
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