がちゃん

ブラックホーク・ダウンのがちゃんのレビュー・感想・評価

ブラックホーク・ダウン(2001年製作の映画)
3.5
個人的に評価が難しい作品です。
大絶賛する声があるのもわかります。
力作です。
でも、心に残るモヤモヤは何なんだろうと思いますね。

ソマリア内戦を収束させるために軍事作戦を実行した米軍。
軍部は一時間足らずで完了すると目論んでいたが、ソマリア民兵の力は想像以上に強く、自慢の軍事ヘリであるブラックホーク64が撃墜されてしまう。

作戦は変更され、ブラックホークの乗員の救出と現場からの撤退が命じられるが、数百ものソマリア民兵に取り囲まれることになり・・・

実話をもとにした物語だということです。
アメリカ軍も全面協力しているために、実際の武器兵器が数多く登場し、その描写にはリアリズムがあります。
ここまで延々と市街戦の様子を描いた作品は他にないという点では評価されると思います。

だけどその部分が丹念であるがために作品のテーマがぼやけてしまったのではないかなと感じるところもあります。

世界の警察を自認するアメリカというものに対して自戒の念を込めたのか、戦争の愚かしさを訴えたかったのか。
それとも傷つき死にゆく兵士たちへの挽歌なのか。

いよいよ危機的状況に陥った時に家族の写真を取り出して思い出に浸るというのはヒロイズム重視の作品によくみられる手法だし、戦場に残した戦友を置いていけないと一念発起するのもそれですね。

戦場で血を流す兵士と机上での戦いを続ける上層部という図式もよくあります。

ヒロイズムはミリタリズムにつながり、そこに悲劇の皮の下で胸を張っているアメリカが見える気がしました。

ラストでこの戦いの顛末が流れ、米兵の死者19人に対してソマリアの死者が1000名以上というクレジットがなされます。
ここに、ほんの少しアメリカの良心があるのですが。

飛び交う銃弾、砲弾。
飛び散る肉片。
残酷だなとおもいました。
力作です・・・が

本作のように直線的ではなく、とても回りくどい描き方をした『地獄の黙示録』(1979)のほうが、私の考える本作のテーマであるアメリカの欺瞞をよく表していたとおもいましたね。
がちゃん

がちゃん