Jimmy

宮本武蔵のJimmyのレビュー・感想・評価

宮本武蔵(1944年製作の映画)
3.3
溝口健二監督が撮った宮本武蔵であるが、1944年の戦時中の作品であり、後年の『元禄忠臣蔵(前編・後篇)』では「俺はチャンバラを撮るつもりはない!」と松の廊下シーンを撮らなかったほどであるから、「どんな宮本武蔵が観られるのだろうか?」と思いながら観てみた。

溝口健二監督にしては、そこそこチャンバラしていたのは、戦時中の国策映画だったからだろうが、それにしても宮本武蔵の迫力不足と佐々木小次郎の弱過ぎるあたりは、内田吐夢などの映画からイメージされる宮本武蔵とはかけ離れた感じだった。

物語は、吉岡一門から果し合いを挑まれた一乗寺の決闘から始まるのだが、やはりチャンバラ場面はあっさりしている。
そして、独特のエピソードとして、兄妹(妹は田中絹代)が「父の仇を討ちたいから、武蔵様の門下にして下さい」と頼みに来るが、武蔵は「怨恨で武士の道は開けない」と言いながら、兄妹が「では、怨恨ではなく武士の道を教えて下さい」と言うとすぐに門下生とするあたりもアッサリしている。
当然、巌流島の決闘まで物語は続くのだが、溝口監督は、どうもチャンバラは描く気持ちは希薄だったのではないだろうか。

この映画で一番良かったのは、佐々木小次郎が居た道場がカラッポになっている所に宮本武蔵と門下女性(田中絹代)が立っているシーンであり、「道場の風景が美しい」のである。
この辺りは、さすが溝口健二監督だと思った。
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