えそじま

野性の少年のえそじまのレビュー・感想・評価

野性の少年(1969年製作の映画)
4.2
ドワネル(=愛を知らない子ども)の世界線は無数に広がっている。大人へ反抗する少年から、愛情を持った教育者の側にまわるトリュフォー自身の過去のステップがメタ的にこの史実とシンクロしているのだと思う。教育論的題材にヘレン・ケラーやカスパー・ハウザーではなくアヴェロンの野生児を選んだのは、イタール博士の記録そのものよりも文体の美しさに惹かれたからだそうだ。四足歩行の野生児が不器用にも二足で歩こうとする、それを支えるトリュフォーの愛情に満ちた眼差し。かつて幼いJPレオを見つめていた目も同じものだったのだろう。ここ最近は文明社会の愚かで醜い部分を描いた作品ばかりに偏っていたものだから、久しぶりにストレートな愛情讃歌で心清まった。そうだった。人間も無償の愛情だけは素晴らしかった。
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