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野性の少年のSのレビュー・感想・評価

野性の少年(1969年製作の映画)
4.0
J・M・G・イタールによるアヴェロンの野生児の記録を映画化した実話に基づく作品。

野に育ち、文明の光栄に浴さなかった少年が、周囲の暖かい眼の中で、人間性にめざめてゆく。記録映画風の手法を用いた作品である。

イタール博士はトリュフォー自身が演じ、数千人の少年の中から主人公に選ばれたジャン・ピエール・カルゴルの薄弱的演技がリアルで驚くべきものであった。
少年は耳は聞こえるようなので言葉を教えるために、身の回りの小道具を用い、牛乳と水を動機づけとする教育をする。その記録として博士が書くモノローグと、教育シーンの映画的なアクションの小気味良い演出、そこにあたたかなクラシック音楽が乗るので面白くないわけがない。
冒頭でジャン=ピエール・レオへの献辞があることからも分かるように、本作はある意味でトリュフォーの自伝的作品である。トリュフォーはヘレン・ケラーの伝記とカスパー・ハウザーの話も映画化を企画しており、登場人物の生徒と教育者には、かつての自分と恩師のアンドレ・バザンの姿が重ねられている。 カメラマンのネストール・アルメンドロスとは本作で初めてタッグを組んだ。


2023/08/03 DVD
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